研究課題/領域番号 |
15K13256
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
岡野 真弓 九州保健福祉大学, 保健科学部, 准教授 (80320498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 読み困難 / 眼球運動 / 音読 / 視線移動特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、通常学級に在籍する読み書きに何らかの問題を抱えている児童に対する読書課題遂行時の視線移動特性の評価法を確立することを目的としている。平成28年度は、読みに困難をもつ児(以下、読み困難児)の文章音読時の視線移動特性を客観的かつ定量的に示す有効な指標について検討した。 通常学級に在籍する小学4・5年生に対して、教研式読書力診断検査による読み能力の包括的評価を行い、その結果に基づいて読み困難児の選出を行った。読み困難児と健常な読み能力をもつ児(健常児)を対象に、眼球運動測定装置を用いて文章音読時の眼球運動を記録し、解析を行った。解析を行うにあたり、その手法を確立するために追加実験を実施した。追加実験では、読み能力に影響を及ぼすとの報告がある遠視性不同視の条件下で文章音読時の眼球運動を記録し、得られたデータを用いて解析手法の検討を行った。追加実験で確立した解析手法を用いて文章音読時の眼球運動を解析し、読み困難児群と健常児群で比較検討した結果、読み困難児群は健常児群に比べて、注視回数、逆行回数が有意に多く、サッケード距離が有意に短いことが確認された。一方、平均注視時間には両群の間で有意な差はみられなかった。本結果より、読み困難児における文章音読時の視線移動特性として、短い距離で視線を移動させて注視を頻繁に繰り返すこと、戻り運動の頻度が多いことが明らかになった。本研究から、読み困難児の文章音読時の視線移動特性を客観的かつ定量的に示すために、注視回数、逆行回数、サッケード距離が有効な指標であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、平成28年度に読み困難児に対する文章音読時の視線移動特性の評価法を確立する予定であった。しかし、眼球運動の解析手法を確立するための追加実験を実施したこと、解析対象データの量が膨大となり、解析に時間を要したことから、評価法の妥当性を検証するまでには至っていない。したがって、現在までの進捗状況は、やや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
読み困難児に対する文章音読時の視線移動特性の評価法について、その妥当性を検証する。また、文章音読時の視線移動特性に関連する背景要因を明らかにするために、読みに影響を及ぼすと考えられている認知機能と文章音読時の視線移動特性との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に読み困難児に対する文章音読時の視線移動特性の評価法について、学会発表および学術雑誌に投稿する予定であったが、課題の進捗が遅れ、研究成果の公開を平成29年度に持ち越したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表のための費用および学術論文の作成、投稿するための費用として研究費を使用する予定である。
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