通常学級に在籍する読み困難児における文章音読時の視線移動特性を評価するのに有用な指標について、追加検討を行った。また、読み困難児における文章音読時の視線移動特性に影響を及ぼす要因について検討した。 1)読み困難児における文章音読時の視線移動特性について、対象者数を増やして検討した。その結果、読み困難児における文章音読時の視線移動特性として、短いサッケード距離で視線を移動させ、停留を繰り返すこと、逆行が多いことが示された。音読パフォーマンスでは、読み困難児は文音読時間が延長し、語頭音の繰り返しが多かった。文章音読時の眼球運動(視線)と音読パフォーマンスとの関連について検討した結果、サッケード距離、停留回数と文章音読時間、逆行率と語頭音の繰り返し数との間に関連があることが確認された。以上のことから、読み困難児の文章音読時の視線移動特性を示す指標として、停留回数、サッケード距離、逆行率が有用であることが示唆された。(論文投稿中) 2)読みに影響を及ぼすと考えられている視覚情報処理能力、音韻情報処理能力と文章音読時の眼球運動(視線)との関連を検討した。その結果、自動化能力(視覚情報に対する音韻情報を素早く取り出す能力)が停留回数、サッケード距離に有意な影響を及ぼす要因として抽出された。読み困難児における文章音読時の視線移動特性には音読における自動化能力の問題が影響していることが示唆された。(論文投稿中) 本研究より、読み困難児における文章音読時の視線移動特性の評価に有用な指標が明らかになった。本指標を用いて文章音読時の視線移動特性を評価することで、読み困難の実態を客観的かつ定量的に把握することができ、読み困難児に対する指導、支援及びその効果判定に応用できると考える。本研究成果は、関連学会及び教員等を対象とする研修会で発表し、意見交換を行った。現在、学術雑誌に投稿中である。
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