研究課題
本研究ではウイルス様の金ナノ粒子の自己集合を目指している。核酸を内部に格納し、局所的に正電荷を有する金ナノ粒子を混合することでサイズが制御できる金ナノ粒子の自己組織化を狙う。局所的に正電荷を有する金ナノ粒子(直径10nm)の合成を中心に進めた。アビジンのC末端にカチオン性のアルギニンの連続配列(12残基)を導入した。アビジンは通常4量体を形成するが、今回は単量体としてビオチンに結合することが分かっている単量体アビジンの末端にアルギニン連続配列(mSAv-R12と略する)を導入した。mSAv-R12の大腸菌発現は成功し、イオン交換カラムにより精製することができた。局所的な正電荷を持たせるためには金ナノ粒子に対してmSAv-R12を一分子だけ結合させる必要がある。そこで金ナノ粒子をアビジンタンパクへの高い親和性をもつビオチンで修飾し、mSAv-R12を一分子だけ結合させる条件(主に混合比)を決定した。金ナノ粒子へのmSAv-R12の結合量は、界面活性剤であるSDSでmSAv-R12タンパク質を剥離した溶液に対して、ウエスタンブロッティングを行うことで定量した。27年度はmSAv-R12を平均して1分子だけ結合した金ナノ粒子の作成条件を見いだすことができた(平成28年春の日本化学会にて発表済み)。またこの粒子が緩衝溶液中で凝集せずに分散していることを光散乱測定で確認できた。今後は核酸あるいは高分子電解質を使った粒子の凝集実験を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
局所的な正電荷を持たせた金ナノ粒子の作製まで成功している。ナノプレートの合成はできているが、まずはナノ粒子を使った実験でウイルス様の集合体が形成できることを示す必要がある。現在、ウイルスタンパク質様の金ナノ粒子パーツが用意できたことからおおむね順調と判断した。
今後は局所的な正電荷をもったナノ粒子を使って、核酸あるいは高分子電解質(ポリスチレンスルホン酸)を使った粒子の凝集実験を進める予定である。塩強度・溶媒などの条件を変えながら、UV-Visおよび動的光散乱測定によって集合体形成を調べていく。また内部に格納する高分子の分子量に従い、集合体のサイズを制御するという目的に沿って進めていく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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