研究課題/領域番号 |
15K13263
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高橋 康史 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (90624841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 界面計測 / 走査型プローブ顕微鏡 / 電気化学計測 |
研究実績の概要 |
安全性の優れた全固体電池は、材料の物性としては実用レベルに達しているが、電池を組むと、固体電解質と正極材料の間で異常な界面抵抗が生じる。この界面抵抗は、空間電荷効果、界面の化学的な変性、格子の不整合など様々な要因があげられている。しかし、これまでの手法は、充放電中に界面でのイオン伝導度を可視化できないため、界面でどのような現象が起こり、界面抵抗が生じるのかがわからない。このほかにも材料内のクラックの形成による材料の利用率の低下など多くの問題を抱えている。そのため、固固界面でのイオン伝導度の不均一性を明らかとする必要がある。そこで、リチウムプローブを用いて、固固界面でのイオン伝導をその場で計測する手法の開発に取り組んだ。平成27年度は、リチウム金属ではなく、固体電解質であるオハラガラスにリチウムイオン2次電池の正極として利用されるLiFePO4の合材電極を接着したものをプローブとして利用して、LiFePO4に接触させた状態でCV測定を行った。金属リチウムではなく、オハラガラスを使用した理由としては、電子伝導性とイオン伝導性を混合することなく、イオン伝導のみを計測するには、電子d年動静が極めて低く、イオン伝導性を有する材料を使用する必要があるためである。測定の結果、サンプルであるLiFePO4でのLiの挿入脱離に伴う電流を観察することができた。通常のナノスケールの接触ではなく、umスケールの接触をさせたにもかかわらず、応答は5 pAに満たない非常に小さなものであった。その理由として、オハラガラスと接着したLiFePO4とサンプルとLiFePO4との間でのリチウムイオンの移動距離が長いためと考えられ、平成28年度は、プローブの微細化にも取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固固界面の計測モデルとして、LiFePO4とオハラガラスを重ね合わせたものをプローブとして使用し、LiFePO4と接触させた状態でCVを計測すると、LiFePO4に対するLiイオンの挿入脱離に対応する電流を観察することができた。このことから、固体電解質をプローブとして利用し、固固界面を局所的に形成させることが可能であることが分かり、原理的に提案している手法が実現可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
全固体電池の充放電中に生じるクラックは、材料中のイオン移動を断絶してしまうが、クラックが生じた際のイオン電導度へ影響や活物質の利用率の関係は、依然として明らかとなっていない。これは、局所的なイオン電導度を計測する技術がないためであり、平成28年度は、固固界面での計測を応用して、実際に問題の生じている電極材料中のイオン電導度を電気化学イメージとして可視化する技術を創生する。
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