研究課題/領域番号 |
15K13264
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬渡 和真 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60415974)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 拡張ナノ空間 / 溶液物性 / 分子間距離 / X線回折 |
研究実績の概要 |
申請者らのグループは、ガラスのナノ加工/低温接合、fL/秒の圧力流体制御、単一分子検出など10-100nmの拡張ナノ空間の基盤技術を世界に先駆けて実現して、粘度上昇やプロトン移動度の上昇、酵素反応速度の上昇など、さまざまなユニークな溶液物性・化学特性をはじめて明らかにした。そして、壁面から水が緩やかに構造化したプロトン移動相モデルを提案してきた。 そこで、これらユニークな溶液物性が発現するメカニズムの解明が必要である。特に溶液物性の発現においてミクロな構造情報が重要であり、そのために溶液X線回折の実現が不可欠である。しかし、拡張ナノ空間はガラス基板上にトップダウン加工により形成された空間であり、mmスケールとなるガラスの厚みに比べて4桁も小さい空間となる。従って、拡張ナノ空間の水の信号はガラスの信号に埋もれてしまい測定は困難である。 本申請では拡張ナノ空間における溶液X線回折を実現することを目的とした。2年間の研究計画の初年度である本年度は、異種材料を利用することで測定部をum程度に薄くする加工プロセスを開発して、なおかつ液体をもれなく導入できる新しいマイクロ化学チップを構築した。そして、放射光で測定を試みたところ水の信号を得ることに初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度はS/Bを改善するためのマイクロ化学チップの確立を目的としていたが、異種材料により十分なS/Bを実現して、予定になかった測定原理の検証まで到達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
水の構造を議論するために統計精度を上げることを目的に、条件を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線回折のための方法論の確立が予想以上に進み、さまざまな流路サイズで構造解析を実施することで拡張ナノ空間の溶液化学の重要な知見が得られるとの考えに至った。したがって、来年度さまざまな流路サイズを用意することを考え、その加工費用を繰り延べた。
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次年度使用額の使用計画 |
100-800nmの流路の基板材料費、加工消耗品費、接合消耗品費、SPring8使用料に使用する。
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