π電子系物質のナノスケール~バルク組織化は新奇な電子・光物性を探索する上で非常に重要な戦略の1つであるが、π電子系物質の分子構造と凝縮系における物性・機能との相関には隘路が存在することが多い。よって、π電子性物質の物性・機能の探索には、集合形態の制御に向けて分子間相互作用の理解と応用が必要となる。本挑戦的萌芽研究では、緻密な分子設計を元にした熱力学安定相、結晶化(3次元)、を利用するのではなく、新規物性に繋がると想定される準安定集合体の検索と構築を目指して、界面(2次元)に集積化(アドレイヤー)を行う研究を遂行した。また、界面のアドレイヤーの集積構造に摂動を与えるために、電気化学界面(Au(111))の提供とその集合構造解析には電気化学STMを利用し、準安定アドレイヤー構造を構築することを目指した。 Au(111)での集積で実績のある、ポルフィリン誘導体をベースとし金属イオンをサンドイッチした構造を持つダブルデッカー型ポルフィリン錯体(DD)のアドレイヤー構築を検討した。これは、酸化還元活性かつ、高さ方向にも将来的に展開可能なためである。対象性の高いDDを合成し、母溶媒の選択、その界面への浸漬時間、観測pHを変更しながら、そのアドレイヤー集積を電気化学STMにより観察した。単独での集積構造が確認できなかった。そこでポルフィリン誘導体との2次元混晶構築も試みたもののAu(111)上への安定なアドレイヤー構築にはいたらなかった。そこで、集積可能な分子構造として、酸化還元による動的挙動の変化が想定される、フェロセン誘導体、ジベンゾペンタレン誘導体、ビフルオリニリデン誘導体を新規に合成することとした。現在までに、ジベンゾペンタレン誘導体、ビフルオリニリデン誘導体の合成は終了し、溶液中における熱的な構造変化と酸化還元挙動については明らかとした。今後、継続して界面での集積挙動を詳らかにする。
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