研究課題/領域番号 |
15K13268
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
|
研究分担者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | スキルミオン / 磁気ナノ構造 / スピントロニクス / 微細加工 / ジャロシンスキー守谷相互作用 |
研究実績の概要 |
電子スピンが渦状に並んだ磁気構造体「スキルミオン」は、その駆動電流密度が極めて小さいことから、近年、次世代の超低消費電力磁気メモリ素子として、国内外で大きな注目を集めている。本研究課題では、ジャロシンスキー守谷相互作用が強いナノドット構造鉄、コバルト、銅系合金において室温でスキルミオンを発現させ、これにより低電流密度でスキルミオンを駆動させることを目的とする。本材料での室温スキルミオンの観測と低電流密度駆動は、学術的に極めて高いインパクトを与えることができると同時に、次世代超低消費電力磁気メモリ素子の実現に向けた重要な第一歩になると期待できる。 本研究目標を達成するため、平成27年度では、スキルミオン駆動実証用のマイクロ素子作製基盤技術の構築を目指した。作製には、電子ビーム描画装置、および集束イオンビーム加工装置を用いた。初めに、電子ビーム描画装置を用いて、ガラス基板上に金/クロムマイクロワイヤ電極を形成した。次に、集束イオンビーム加工装置を用いて、鉄、銅系合金を金/クロムマイクロワイヤ電極間に架橋させた。集束イオンビーム加工装置にはマイクロサンプルシステムが搭載されている。そのため、サンプルの切り出し、ピックアップ、セッティングが可能である。本装置を用いて、鉄、銅系合金を切り出し、マイクロサイズ化した後、ピックアップし、金/クロムマイクロワイヤ電極間に架橋させた。金/クロム電極と鉄、銅系合金間のコンタクト形成にはタングステンデポジション法を用いた。作製したマイクロ素子の電気伝導特性を調査した結果、金/クロムマイクロワイヤ電極と鉄、銅系合金間において良好な電気抵抗特性が得られた。本作製手法はスキルミオン駆動実証用のマイクロ素子作製基盤技術として極めて有用であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を推進することにより、スキルミオン駆動実証用のマイクロ素子作製基盤技術を構築することができた。本結果は平成27年度の研究実施計画に従って得られた研究成果であり、これにより平成28年度の研究内容を予定通り遂行できるものと考えられる。このような事由から本研究は順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究成果に基づき、平成28年度は、ナノドット構造鉄、コバルト、銅系合金から構成されるマイクロ素子において室温でスキルミオンを発現させ、これにより低電流密度でスキルミオンを駆動させることを目指す。 マイクロ素子の作製には、平成27年度に構築した電子ビーム描画装置と集束イオンビーム加工装置を利用した作製手法を用いる。本素子に電流を流し、電気伝導特性、並びに、スピン状態を調査する。電気伝導特性の測定には、既に構築した直流・交流4端子法を用いる。スピン状態の観察には、磁気力顕微鏡と集光型極・面内磁気光学カー効果法を用いる。ナノドット構造鉄、コバルト、銅系合金マイクロ素子の膜厚、幅、長さを検討パラメータとして、室温スキルミオンの電流駆動を実証する。理論面からはジャロシンスキー守谷相互作用をエネルギー項に加えたLandau-Lifshitz-Gilbert方程式とLandau-Lifshitz-Bloch方程式によるシミュレーションを検討し、スキルミオン駆動のダイナミクスについて明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
経費節減を行ったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
経費節減の結果生じた使用残額については、平成28年度に成果発表のための旅費、並びに、必要消耗品費に使用する。
|