微細素子は、その特性を決定する物質と電子を注入するナノメートルサイズの電極で構成されているため、ナノ接点部の構造と物性を同時に観察する必要がある。ナノ接点の構造、透過率およびコンダクタンスを同時に観察し、これらの関係から、ナノ接点の物性を解明するため、極低温装置を必要としない新しい室温下ショットノイズ解析の手法開発を行った。 室温下ショットノイズ解析は、電圧印加部、高周波測定部、ロックイン検波部およびこれらの同期システムで構成されるが、27年度までに電圧印加部、高周波測定部の開発は終了したので、新しい実験手法によって電極構造や分子の構造が可視化できるようになった走査トンネル顕微鏡を用いた有機分子の電気伝導特性の研究に、室温下ショットノイズ解析の手法を導入するため、走査トンネル顕微鏡に、トンネル電流の測定と同時に数百MHz~2GHzの信号を測定できるように装置の改良を行った。 また、実際に走査トンネル顕微鏡を用いた有機分子の電気伝導特性へ室温下ショットノイズ解析の手法を導入した場合に得られるコンダクタンスとそのノイズについて予測を立てるため、可視化した電極間の分子構造とコンダクタンスの関係から第一原理計算を用いて分子の構造とコンダクタンスを計算し、電極と分子間の透過率と分子の構造について予測した。この結果から、高周波測定部にはスペクトルアナライザと共にショットノイズの平均値をサンプリングレート1kHzで測定するパワーメーターが必要となったため導入した。
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