研究課題/領域番号 |
15K13273
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
武田 淳 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60202165)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コヒーレント制御 / パルスシェーピング / 自己組織化単分子膜 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、(1)半導体・ガラス基板上に金ナノ構造体を作製し、その上に自己組織化ベンゼンチオール単層膜を配向させ、(2)~10フェムト秒の時間分解能を持つパルス波形整形技術を構築し、(3)金ナノ構造のプラズモン共鳴を通してカップリングしたベンゼン環の伸縮モード間の非調和ダイナミクスのコヒーレント制御を行うことを目指している。 今年度は、広帯域空間位相変調器、分散補償チャープミラー、ウェッジ、凹面鏡を組み込み、ポンプ光・プローブ光各々の光学系の分散特性を精緻に制御することにより、~10フェムト秒パルス波形整形技術を構築した。その結果、ウェッジペアの挿入量と空間位相変調器の調整により、パルス間隔・パルス数を任意に制御したパルス幅12フェムト秒のパルス列を生成できることがわかった。これを参照物質である強誘電体サンプルやシリコンカーバイドに適用することにより、15~25テラヘルツの高周波フォノンの振幅をコヒーレント制御することに成功した。 また、ガラス基板・マイカ上に金微粒子を分散させ、その上にベンゼンチオール単分子膜を生成し、コヒーレントフォノン分光を実行した。さらに高強度テラヘルツ波により金ナノ構造体の非線形性を評価した。これらにより、自己組織化単分子膜の振動状態制御を最終年度に行う下地が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、以下のの3つのサブテーマを設定している。(1)~10フェムト秒パルス波形整形技術の構築(分光手法開発)、(2)金ナノ構造体上の自己組織化単層膜の作製、(3)(1)と(2)を組み合わせた自己組織化単分子膜の振動状態制御、である。 このうち、(1)および(2)を計画通りに実行できた。また、金ナノ構造体のモルフォロジーや電場増強度をSEMやSTMにより計測し、ナノ構造体の持つ非線形性を評価できた。これらにより、最終年度に(3)を行う素地ができた。 よって、研究の進捗状況はおおむね順調に推移していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を受け、最終目標である「金ナノ構造体を通して結合した単分子膜の振動モードの変調」を行う。任意のパルス間隔を持つ整形したパルス列を用いて、高周波分子振動の振幅をコヒーレントに制御する。また、空間位相変調器の振幅変調によりダブルパルスを用意し、プローブ光と第1ポンプ光、第1・第2ポンプ光間のパルス間隔を変えながら2次元相関分光を実行する。得られた2次元フーリエ画像から対角成分・非対角成分を抽出することにより、非線形・非調和カップリングの起源を探る。これらを通して、単層膜や単分子の振動ダイナミクスの高感度検出及びその制御方法を確立する。
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