本研究課題では、サブ10フェムト秒パルス整形技術を構築し、半導体、誘電体更には単分子/単層膜の振動状態をコヒーレント制御することを目指している。 昨年度は、広帯域空間位相変調器とサブ10フェムト秒レーザーを組み合わせることにより、パルス波形整形光学系を構築した。昨年度の成果を受け、最終年度である本年度は、炭素系材料であるSiC、金属型カーボンナノチューブ、グラフェン単層膜、ベンゼンチオール単分子膜など様々な物質系における振動状態制御を行った。SiCでは、観測される2つの振動モードの相対強度を3つのパルス列の時間間隔を変調することにより自在に制御した。金属型カーボンナノチューブでは、フェルミ面をバイアス印加で変調しながら電子・格子結合ダイナミクスを計測し、キャリア散乱確率を評価することに成功した。グラフェン単層膜では、ブリュースター角でコヒーレントフォノン分光を実行することにより、単層膜の振動成分を下地の振動成分と切り分けて計測できることを示した。この手法は、基板上の単層膜や単分子の振動ダイナミクス測定に有効な手法となり得る。ベンゼンチオール単分子膜では、ベンゼンチオール溶液とのコヒーレントフォンを比較することにより、下地との相互作用により周波数シフトしたコヒーレントフォノン信号を検出することに成功した。
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