研究課題/領域番号 |
15K13274
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大岩 顕 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (10321902)
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研究分担者 |
赤羽 浩一 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (50359072)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メゾスコピック系 / MBE / 量子細線 / 半導体微細化 / 低温物性 / マヨラナフェルミオン / 超伝導接合 |
研究実績の概要 |
大岩はまず、昨年度、赤羽が成長した1.5μm厚のInAlSbバッファー層を持つInSb量子井戸について欠陥と電気伝導の評価を行った。透過電子顕微鏡観察の結果は、量子井戸が形成される表面付近で貫通転移密度が大幅に低減していること示しており、厚いInAlSbバッファー層の効果を確認した。続いてこの量子井戸の低温磁気輸送特性の評価を大阪大学で行った。縦抵抗には2次元電子が存在することを示唆する振動的な振る舞いが観測された。しかし移動度は1100 cm^2/Vsと低く、これを向上するため成長方法の改善が必要であることが明らかになった。並行してサイドゲート型InSb量子ポイントコンタクトのプロセス技術の確立に取り組み、ほぼ確立できた。 赤羽は上記の電気伝導の結果を受け、高品質InSb量子井戸の作製に関する検討を行った。これまでのInSb量子井戸はGaAs基板上に歪緩和した厚いGaSbもしくはAlSbバッファー層を結晶成長し、その上にInAlSbとInSbからなる量子井戸を形成したものが多いが、この場合貫通転位が発生するためInSb量子井戸の高品質には限界があると考えた。本研究ではこの点を改善するために基板にInSbを用いこの上に格子不整合度の小さいInAlSbバッファー層を結晶成長し、その上にInSb量子井戸を形成する手法を導入した。これにより量子井戸形成後の試料の表面平坦性が大きく改善され、表面ラフネスが5nm未満の平坦性を持つ試料の作製に成功した。現在、大岩がこの基板の電気伝導評価を行っている。 当初目標としていた、InSb1次元細線/超伝導接合でのマヨラナ粒子の探索を実現するには至っていないが、核となる高品質InSb1次元細線の実現に関して、成長とナノ細線加工技術で重要な知見と技術を確立し、今後の展開が十分期待できる成果を得た。
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