研究課題/領域番号 |
15K13275
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内藤 賀公 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90362665)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面界面物性 / 原子間力顕微鏡 / 電子顕微鏡 / ナノコンタクト / トライボロジー |
研究実績の概要 |
本研究では、超高真空電子顕微鏡内で駆動する原子間力顕微鏡特殊ホルダーを開発し、原子間力顕微鏡探針(先鋭な物体1)と試料表面(平坦な物体2)とが接触したときのサブナノスケールの構造とそこに働く相互作用力(荷重力と摩擦力)を同時に観測する技術を開発することである。 現在、電子顕微鏡用原子間力顕微鏡(REM-AFM)ホルダーの製作中である。 一方、現在まで他周波数モードAFM(力センサーであるカンチレバーのたわみモードとねじれモードを利用)を用いて探針-試料表面間に働く相互作用力を空間的にベクトル表示できる技術を確立した。この手法を用いてGe(001)表面上で相互作用力分布を観測し、力ベクトルの分布をサブ原子スケールで空間的に検出することに成功した。この研究成果はこれまでの顕微鏡技術では達成できなかったものであり、論文にまとめて国際的に著名な学術誌に投稿中である。 また、固体表面の電荷分布やその変化(電荷移動)を捉えるために新しいケルビンプローブ力顕微鏡法(KPFM)を考案した。現在原子スケールの電荷秩序を持つTiO2(110)表面を用いて電荷移動現象を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたよりもホルダーの製作が遅れている。設計段階で時間を要したため完成までにホルダー作製に時間を要している。 他方、探針-試料間に働く近距離相互作用力の表面垂直成分:Fz(たわみモードから取得)と水平成分:Fx(ねじれモードから取得)を高感度に(サブ原子スケールで)同時取得できる技術を開発した。また、固体表面電荷分布やその変化を捉えるための新しい電荷計測技術を開発しており、これらを用いることで、効率よく表面弾性状態と表面電荷分布を同時測定することが可能となっているため、今後の研究をスムーズに行える体制を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
探針-試料間に働く相互作用力を空間的にベクトル量(荷重力と摩擦力)として検出する新しい力計測技術を確立できたので、AFM探針で試料表面を掃引した時の接触領域の構造とそこに作用する相互作用力とを以下のa)-c)の状態の下で観測する。 a)探針試料間距離(相互作用力の大きさ:弾性状態から塑性変形が起こるまで)を変えたとき---探針先端や試料表面が不可逆な変形を伴わない時の相互作用力を観測する。この状況を基準に、探針を試料表面に近づけ、塑性変形が生じたときの構造変化とそこに伴う相互作用力とその変化を観測し、機械的に安定な相互作用力状態と2物体構造との関係について考察する。 b)探針と試料の接触面積(点接触=>面接触)を変えたとき---探針先端の先鋭度を原子一個に終端されたものからダルなものに変化させたときに探針試料間相互作用力や弾性・非弾性状態がどのように変化するのかを観測し、接触面積が摩擦現象に及ぼす影響について考察する。なお、探針先端は表面を掃引し続けることで試料表面に対し平坦な構造になっていくことがわかっている。この手法を用いて探針先端を変形させ接触領域の面積を調整する。 c)試料に対する探針の掃引方向を変えたとき---銅(110)やゲルマニウム(001)表面は構造に異方性があるため掃引方向による相互作用力に違いが生じると考えられる。これらの相互作用力の変化を捉えて、摩擦力の低減化のために要求される探針と試料間の構造について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子顕微鏡用特殊AFMホルダーの作製に時間を要しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に予定していた早急にホルダー作製を完了し、そこに充当する。
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