研究実績の概要 |
本研究では、超高真空電子顕微鏡(TEM)内で駆動する原子間力顕微鏡(AFM)特殊ホルダーを開発し、原子間力顕微鏡探針と試料表面とが接触したときのサブナノスケールの構造とそこに働く相互作用力(荷重力と摩擦力)を同時に観測する技術を開発することである。 先ず、AFMの力センサーであるカンチレバーを2方向に同時に励振させることで、探針-試料表面間に働く相互作用力の表面垂直成分と水平成分を同時にサブ原子スケールで計測する手法(2周波数モードAFM法)を考案した。得られた力は微弱ながらその水平成分に異方性があり、表面構造の異方性が弾性的な摩擦力に反映されることを観測できた。さらに、エネルギー散逸を伴う探針試料表面間に働く相互作用力の2方向成分をとらえることにも成功した。 また、試料表面にゲルマニウム(001)表面を適用することで、表面原子が感じる力の3方向(X,Y,Z)成分全てを取得して3次元ベクトルとして表し、その空間分布を取得できる技術を確立した。この2周波数モードAFM法はこれまでの顕微鏡法では達成できなかったものであり、今後のナノスケール物性計測に新たな展開が期待できる。この研究成果は論文にまとめて国際的に著名な学術誌(Nature Physics)に掲載された。 さらに、固体表面の電荷分布を捉えるために3 倍振動を用いた静電気力分光法を新たに開発した。この手法と2周波数モードAFM法を利用してAFMカンチレバーの共振周波数の変化(周波数シフト)を三次元的に測定し、試料表面上の電荷分布が摩擦力に与える影響を原子スケールで導出できる技術を開発した。
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