研究課題/領域番号 |
15K13277
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
春山 純志 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (70296383)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェン / 水素修飾 / フッ素修飾 / スピン軌道相互作用 / スピンホール効果 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
軽元素である炭素原子からなるグラフェンにスピン軌道相互作用(SOI)を導入し、スピンホール効果を観測、最終的に2次元トポロジカル絶縁体状態の実現を目指した。このためにまず本年度下記2つの方法でSOI導入を試みた。両者共、結晶性を破壊しない程度の微量水素・フッ素修飾によりグラフェンの面直方向対称性を破壊することで、ラシュバ型SOIが期待できる。 (1)電子線(EB)特殊レジスト(HSQレジスト)の塗布とEB照射 (2)フッ素修飾 まず(1)では水素原子を含むHSQレジストをグラフェン表面に塗布し、照射EBドーズ量を細かく振って0.1%以下の微量オーダーでグラフェン表面を水素修飾した。この修飾量はラマン散乱測定のDピークから行ったが、EB照射によりグラフェン表面に微量な欠陥も発生するため、必ずしも正確な水素量が見積もれるわけではないことがわかった。その結果、スピンホール効果(SHE)らしき特性は得られたが再現性は悪いことが分かった。 そこで(2)では直接微量なフッ素でグラフェン表面を修飾し、現在SHEを観察中である。水素に比べ質量の大きいフッ素では、微量修飾でもより明確なSHEが観測されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HSQレジスト塗布や電子線照射によりグラフェン表面に汚染や欠陥が微量に生じてしまい、その移動度が減少した。これによりスピンホール効果の再現性良い観測が困難になったため。
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今後の研究の推進方策 |
フッ素修飾をメインにし、微量修飾量とスピンホール効果(SHE)の相関を詳しく観測する。さらにHanle効果やラルモア歳差運動など各種測定で、SHEの存在やスピンの挙動を観察する。その後、2次元トポロジカル絶縁体としての可能性を光電子スペクトル観測などで究明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究過程で、グラフェン表面の水素修飾のために塗布した電子線レジストへ電子線照射した場合予想上にダメージがグラフェンに入ることが分かり、条件の見直しなどに時間がかかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
電子線照射の条件見直しとフッ素によるグラフェン修飾を行う事で、スピン軌道相互作用とスピンホール効果の導入、及び二次元トポロジカル絶縁体状態の発生探索を試みる。
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