研究課題/領域番号 |
15K13279
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庭野 道夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20134075)
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研究分担者 |
平野 愛弓 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (80339241)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノバブル / ポーラスアルミナ / 洗浄効果 / 赤外吸収分光 |
研究実績の概要 |
ナノバブル(NB)は気泡サイズが1マイクロメーター以下の残留性を持った微小気泡である。本研究では、規則的なナノ細孔を有する多孔質アルミナ薄膜を通して高圧ガスを溶液内に噴射することでNBを発生させる新規手法を提案し、生成したNBの粒径分布を電気抵抗ナノパルス法を用いて解析し、また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察、赤外吸収分光法とエネルギー分散型X線分光法(EDX)による元素分析を行い、NBによる有機物洗浄効果を詳細に調べた。 粒径分布を測定した結果、約160 nmと約360 nmを中心とする2つのピークを持つ分布が観測された。前者のピークは多孔質フィルタの孔径(約150 nm)とほぼ同じ大きさであり、フィルタの1つの細孔から生成された気泡であること、もう一方の粒径が大きい気泡は複数個のナノ細孔からのガスが同時放出されることで形成されることが分かった。この結果はナノ細孔によるナノバブル発生のメカニズムを解明する上で有益な実験結果である。 有機膜で被覆されたシリコン基板を二酸化炭素NBを含む純水中に浸漬させ、浸漬後の表面を調べた。赤外吸収分光測定により基板表面の有機物の減少が観察され、またSEM観察により表面にミクロンサイズの円形のパターンが多数観察された。EDXによる元素分析した結果、円形パターンの中心部からは有機膜に由来の炭素元素が検出されたが、円形パターンのほぼ全域からは炭素元素が検出されなかった。このことは、NBが一度表面に吸着した後に、NB下にある有機薄膜を巻き込みながら中心に向かって縮小することで、有機物を除去していくと解釈される。この結果はナノバブルの有機汚染除去のメカニズムを解明する上で極めて有用な知見と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生成したNBの粒径分布を電気抵抗ナノパルス法を用いて解析する手法は当初計画していなかったが、この手法を用いることにより、ナノバブルの発生メカニズムや、溶液中のナノバブルの挙動が明らかになることが分かり、今後の更なる発展が大いに期待できる。特に、二酸化炭素は水に溶け易く、安定に存在しないと予想していたが、粒径分布測定の結果、窒素ガスNBと同様な粒径分布を示すことなどが分かり、ナノバブルの安定性を研究する上で極めて重要な実験結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
生成したNBの粒径分布などを電気抵抗ナノパルス法を用いて解析することにより、ナノバブルの発生メカニズムや、溶液中のナノバブルの挙動が明らかにする。
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