ナノバブル(NB)は気泡サイズが1μm以下の残留性を持った微小気泡であり、近年、洗浄技術や医療分野など多方面において応用が期待されている。しかしこれまでに提案された方式ではNBの生成に高価な装置が必要であり、これがNBの普及を妨げていた。そこで本研究では、規則的なナノ細孔を有する多孔質アルミナ薄膜を通して高圧ガスを溶液内に噴射することでNBを発生させる新規手法を提案した。これまでに、①疎水性膜を成膜した基板にNBを噴射すると、NB生成に使用した多孔質アルミナフィルタの孔径と同程度の大きさの円形痕が原子間力顕微鏡で観察されること、そして②導入ガスに由来する吸収ピークが多重内部反射型赤外分光法で検出されること、が確認できており、これらの結果から基板表面にNBが存在することが示唆されていた。しかし、この方法で生成したNBが溶液中においてどのように存在するのかは明らかにできていなかった。そこで本研究では、生成したNBの粒径分布を、電気抵抗ナノパルス法を用いて解析した。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察とエネルギー分散型X線分光法(EDX)による元素分析を用いて、NBによる有機物洗浄効果を調べた。 多孔質薄膜を用いて発生させたNBが水中においても安定に存在することを電気抵抗ナノパルス法により確認した。また、NBの粒径は、多孔質膜の孔径にほぼ等しく、100nm程度であることが分かった。さらに、SEM/EDX分析により、固体表面上の有機薄膜がナノバブルの吸着により表面から剥離する過程を観察できた。ナノバブルは疎水性の有機薄膜に平たく円形に吸着し、円周部から有機薄膜を剥離していくことが分かった。
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