研究課題/領域番号 |
15K13281
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
藤村 隆史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50361647)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / セミシェル構造 / 光熱変形 |
研究実績の概要 |
金属セミシェル構造は、大きな吸収断面積を有しているため、プラズモン共鳴波長のレーザー光の照射により効率的に熱が発生し、金属が融解してシェル形状の変形がおこる。本研究の最終目的は、この光熱変形プロセスを利用し、光照射後に別の機能が発現する動的プラズモニックデバイスを創成することにある。特に本研究課題では、ナノ構造をより少ない光量で形状変形させることを狙い、光熱変形を容易に起こすことができる金属の探索とナノ構造の最適化に重点をおいて取り組む。 本年度は、第一原理計算ソフトウエアであるVASPを用いてシェル金属の探索を行った。本研究において必要とされる特性は、低い融点と小さな損失(誘電率の虚部)である。前者は少ない熱量(エネルギー)で光熱変形を起こすために必要な特性であり、後者は光のエネルギーを効率よく吸収し熱に変換するために必要な特性である。しかし一般的によく用いられている金や銀などの貴金属は、低損失であるものの融点は1000度以上と高い。そこで本研究ではこれら貴金属をベースとし、低融点金属をまぜた合金の調査を行った。その結果、AuとSnをそれぞれ3対1程度に混ぜ合わせたAu-Snの合金において良好な結果が得られた。この合金では吸収断面積はAuの40%程度に低下するものの融点が3分の1以下に低下するため、結果的に30%程度光熱変形に必要なエネルギーが低下できると試算された。一方で低融点金属としてBiを含んだ合金は28年度に行う多層セミシェル構造に用いる金属として適していることがわかった。たとえばAgの上にBiを積層した多層セミシェル構造では、層が分離している状態ではプラズモン共鳴ピークが現れるものの、まざりあって合金化されると共鳴ピークがブロードになり大幅に低下するという結果が得られた。これはこの光熱変形を光メモリーへと応用する際にメリットとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りVASPを用いた光熱変形プロセスに有効な合金の探索を開始することができ、AuとSnを用いることで低エネルギー化を図れるという試算が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、VASPを用いた材料探索を引き続き行うとともに、構造側からのアプローチである多層セミシェル構造による変形閾値の低減の課題を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額16円は、27年度予算をほぼ予定通り使用した結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度予算を予定通り執行する。
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