研究課題/領域番号 |
15K13282
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
村上 純一 埼玉大学, 理工学研究科, 客員教授 (00157752)
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研究分担者 |
二又 政之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20344161)
阪東 恭子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (50357828)
下位 幸弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能材料コンピュテーショナルデザイン 研究センター, 研究チーム長 (70357226)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パラジウム / 窒素活性化 / 常温アンモニア合成 / X線光電子分光法 |
研究実績の概要 |
本研究では、窒素(N)が吸着したパラジウム(Pd)表面において、窒素分子(N2)が活性化され、その活性N2と水(H2O)との反応によってアンモニア(NH3)と亜酸化窒素(N2O)が生成すること、これによって、N2とH2OによるNH3生成触媒反応が可能となること、をX線光電子分光法(XPS),や質量分析法、赤外(IR)分光法を用いて明らかにする。今年度は以下の研究を実施した。 (1)科研費で作製した赤外分光セルを用いて、シリカ(SiO2)微粒子に担持したPdクラスター(サイズ~10nm)上のNH3の検出を試みた。実験ではPd担持SiO2微粒子をディスク状に成形し、それをNH3に曝露させた後、手持ちの赤外分光計による測定を行った。NH3に特有なN-H振動の検出を試みたが、目的の振動は観測することができなかった。一方、XPS測定によってNH3がPdクラスターに吸着していることが確認されたので、赤外分光のネガティブな結果は赤外の吸収強度が弱いためであると結論された。 (2)Pd表面へのN2吸着の安定構造を第一原理計算によって調べた。その結果、Pd(100)表面にはdi-σ型ではなく、通常のon-topで吸着する方が安定であることが分かった。 さらに、 (3)遷移金属クラスター構造によるN2の活性化、そのN2とH2Oとの反応によるN2O、NH3の生成を再確認するために、以前実験を行った気相タングステンナノクラスターによる常温でのN2の活性化と、そのH2Oとの反応のデータ(反応の時間変化とそのクラスターサイズ依存性)を再検討した。これによりナノクラスター構造によるN2活性化と、H2Oとの常温での反応によるN2O生成が確かに起こることを確認した。この成果を国際学術誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Pdクラスター上に吸着したNH3を赤外分光で検出する実験を行ったが、検出感度が予想外に低く、この問題を解決しようとする試みに多くの時間を費やした。 さらにその後、超高真空中でPd表面に反応ガスを吹き付け反応生成物を質量分析法で検出する実験に移行したが、装置に不具合がありその問題を解決するのにも多くの時間を費やしてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
検出感度が赤外分光に比べてはるかに高い質量分析法を用い、超高真空中でPd基板上におけるN2とH2OからのNH3, およびN2Oの生成を確認する。 具体的には、 (1)N2とH2をN吸着Pd基板に吹き付け、NH3が生成することを確認する(N吸着Pd表面によるN2活性化の確認)。 (2)N2活性化が確認された基板にN2とH2Oを同時に吹き付け、NH3、N2Oが同時に生成するかを調べる。基板温度を変化させ、NH3生成に最適な条件を探す。 (3)Pdを担持したシリカ、カーボン、アルミナなどの触媒上でN2とH2Oを反応させ、NH3の生成を化学的方法で確かめる。 (4)N吸着Pd表面の第一原理シミュレーションを行いN2吸着を可能にする表面幾何構造・電子状態を明らかにする。また吸着したN2の活性化について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が予定していた海外研究集会(ISSPIC18(超微粒子と無機クラスターに関する国際シンポジウム)2016年8月フィンランド)への参加を都合により取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
超高真空実験で使用するガス配管系、真空ゲージ等を購入するのに使用する。
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