本年度は、初年度に予定していた分子線エピタキシー法の装置の改造を進めるとともに、それを実際に運用して、物性開拓に資する二次元金属試料の成長法の確立を進めた。初年度においてすでに、バルク結晶では超伝導体として知られているNbSe2を対象として、分子線エピタキシー法による単層の結晶成長に成功している。しかし、初年度の検討を通して、高真空・高温下のNbSe2の結晶成長では、Seの熱的な脱離に起因するSe欠陥の生成が、物性評価に有用な高品質なミクロンサイズの単層NbSe2を成長させる上で大きな問題であることが明らかとなった。本年度は、カルコゲン供給用のKセルにクラッキング機構を装着し、Seクラスターとしてルツボから蒸発したSeを原子状のSeへと分解してから基板へと供給することでSeの反応性を上げ、NbSe2骨格へSeが効率的に組み込まれるように改善を行った。また、無収差分光器を導入することで高分解能分光システムを構築し、作製した試料の低波数からのラマン分光、発光分光を用いた評価も進めた。
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