金属ナノ粒子における金属核の合金化は、ナノ粒子の物性を制御する代表的な手法の一つに挙げられる。我々はPdとPが原子レベルで混合された非晶質Pd-Pナノ粒子が、粒径や単分散性を保持したまま、様々なPd基合金ナノ粒子に変換する新奇合金化現象を見出しており、この現象を利用することで、単分散Pd基合金ナノ粒子の粒径および合金種を、たった一つの合成手法で極めて精密にかつ容易に制御することが可能となる。本研究では本合成手法の①反応機構の解明、②汎用性の拡大、③新規材料創出への応用、について詳細な検討を行い、本合成手法の有用性を明示した。 ①反応機構の解明では、Pd-Pナノ粒子中のPdは反応前後で価数に変化はなく0価の状態であるのに対し、Pは反応前では原子状のPよりも酸化数が低い状態である一方、反応後に検出されたPはリン酸塩中のPのような高酸化状態であることが判明した。以上の結果は、本現象が「合金ナノ粒子における元素選択的ガルバニック置換反応」という新規現象であることを強く示唆している。②汎用性の拡大では、非晶質Pd-Pナノ粒子に限らず、結晶性Pd3Pナノ粒子においても同様の合金化が進行することを確認し、これまでに合成したPd基合金ナノ粒子に加え、新たにA1-CoPd3およびB2-PdInナノ粒子の合成にも成功した。また、中空状のPd-Pナノ粒子から中空状のPd基合金ナノ粒子を合成することにも成功し、本手法が粒子の形態を反応前後で保持することができる「仮晶反応」であることを示した。③新規材料創出への応用では、B2-PdInナノ粒子が可視光域に局在表面プラズモン共鳴吸収を有することを世界に先駆けて発見し、AuやAgに匹敵する可視光プラズモン材料への応用が期待される。 以上の検討を通じて、一つの手法で多種多様な合金ナノ粒子の合成が可能であることを実証し、材料創製への道筋を見出した。
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