研究課題
電気化学反応を行いながらの電子顕微鏡観察について、その観察法と試料作製法を確立することを目的として、リチウムイオン電池の負極材料として使用する事が期待されているSi粉末の研究を行った。この材料は、現在使われている炭素材料と比べて、充放電容量密度が数倍以上大きいが、リチウムイオンの挿入・脱離に伴う形状変化が研究課題となっている。すなわち、形状変化によって材料そのもの、あるいは電極活物質としての形状が変化し、それによって充放電を繰り返すことによる容量の低下を招く。これについて、電気化学的充放電反応を行いながらのSEMとTEMでの観察を試み、容量低下が起こる要因に関する情報を得る事を試みた。使用したSi粉末材料としては、①粒径が数マイクロメートルの粉体、②粒径が数十ナノメートルの粒子の凝集体、そして③厚みが100ナノメートルの鱗片体である。それぞれの材料について充放電反応を行うと、①については、Liイオンの挿入を伴う充電反応時に粉体に亀裂が入り、放電時に体積の減少が見られるものの、充放電を繰り返すとやがては体積変化が認められなくなった。②については、凝集体全体の体積が充電時に増加、放電時に減少することが繰り返し観察できた。③については、充電時に鱗片はしなやかに曲がりながら体積が増加し、放電時も曲がりながら体積を減少させた。これらの挙動は、それぞれの材料の充放電のサイクル特性の変化を説明するのに十分な証拠であり、in situのSEMとTEM観測を行う事が、電気化学反応挙動の材料による特性変化を解析するのに有効な手段である事を明らかとした。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 36153
10.1038/srep36153