レアメタルは希少かつ鉱山が地球上の一部地域に集中して偏在化しているため、昨今、価格高騰や輸出規制が問題となっている。一方、原発事故で大きな社会問題となっている放射性元素についてレアメタルを含む金属イオンの回収が喫緊の課題となっている。そこで、これらのメタルを選択的に検出し回収する全く新規のリサイクル技術を開発することを目的とする。 この分子システムは、1)結合、2)検出、3)選択、4)センシング、5)回収、の5段階から構成される。本年度は、主として3)4)を中心に行い、この結果を適用することで、5)の完成を目指した。標的とするレアメタル(アース)として用いた金属は、その有用性と深刻度より、イリジウム、ロジウム、ネオジム、ディスプロシウム、金、白金、パラジウム、ユーロピウム、ホルミウム、ツリウム、インジウムおよびセシウムとした。また、金で成功しているメタル結合に伴ってあたかもリトマス紙が酸性度を検知するかのごとく呈色することで容易に目的金属の有無を検出するセンシングシステムを作るため、4)の対象メタルとして、ロジウム、パラジウム、白金をターゲットとした。 ペプチド設計では、2種類の基本骨格を用いた。即ち、24アミノ酸残基からなるαへリックス型の金属イオン結合型人工設計ペプチド、および12残基からなる環状ペプチドである。この結果、αヘリックス型のペプチドについて、新たに①ロジウムと結合する、②イリジウムとパラジウムに結合する、③イリジウムと金に結合する、という3種の結合性を発見した。また、環状ペプチド型では放射性同位体を持つセシウムとの相互作用を見出した。センシング能力については、金属として金およびロジウムについて電子顕微鏡観測を行った。この結果、ペプチドが金属イオンをナノ粒子状態に集合させる性質を有していることを示す画像を得ることができた。
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