研究課題/領域番号 |
15K13291
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
高木 慎介 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (40281240)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発光増強 / ナノシート / 粘土鉱物 / 蛍光増強 / S-FIE / 無放射失活 |
研究実績の概要 |
粘土鉱物-色素複合体を用いた強発光材料の開発のタイトルのもと研究を進めた結果、下記のように優れた成果を得た。20を越える種類の化合物について系統的に、粘土鉱物との複合化による発光増強現象を調査した結果、ほとんどの色素において普遍的に発光増強が観察されることがわかった。粘土鉱物としてはおもに化学合成粘土鉱物である合成サポナイトを用いている。この材料は溶液状態、固体膜状態においてほぼ完全に可視域で無色透明となることができ、光学材料としての使用に適した性質を有している。適用する色素によっては10倍以上の発光増強が見られ、機能性光材料の開発において本技術が極めて有望であることがわかった。具体的には、ビオロゲン類、ポルフィリン類、ジミジウム塩類、スチルバゾリウム塩類などにおいて、著しい発光増強が誘起された。溶液状態、固体状態ともに著しい発光増強が認められたが、粘土鉱物は無色透明であるため視認性も非常に良い。また、発光増強のメカニズムについても、蛍光量子収率、蛍光寿命の解析の元に考察をすすめ、放射失活速度定数の増大、無放射失活速度定数の減少が、発光増強に大きく寄与することを明らかとした。具体的には温度効果実験を行い、エネルギーギャップ則に基づくデータの解析を行った。これらの結果からナノシート上の色素もエネルギーギャップ則に基づく発光挙動を示すことが明らかとなり、さらには、振電相互作用もこれらの発光増強機構に関与していることが示唆される結果を得た。これらの成果をもとに、国内外で招待講演などを行い、また、海外学術雑誌において、Invited Feature Articleとして総説による成果発信を行った。特に本現象を、Surface-fixation induced emission (S-FIE)と名付けた。今後はさらに適用色素を増加させるとともに応用面も見据えた研究展開をはかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
得られた成果をもとに、国内外で招待講演などを行い、また、海外学術雑誌において、Invited Feature Articleとして総説による成果発信を行った。特に本現象を、Surface-fixation induced emission (S-FIE)と名付けた。これらの成果は予想を上回るものである。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究により、当初提案した、粘土鉱物との複合化による発光増強について、予想以上に好結果が得られている。今後は、より応用面を意識した検討を手厚く行う予定である。例えば、固体応対における検討、環境応答性の付与、必要な波長における発光色素の探索などに重点を置き、研究をすすめる予定である。特に環境応答性を検討することで、表示材料、センサーなどの開発に結びつく可能性があり、高い発光効率を利用すれば、省エネルギーにも寄与することが可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に購入した試薬類を用いた研究が進展し、それらの試薬類での研究が大幅に増加したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は応用も見据えた研究を行うため、試薬類などの支出を行う予定である。
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