研究課題/領域番号 |
15K13293
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
野口 裕 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (20399538)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気化学発光セル / 単一分子発光 / 変位電流評価法 |
研究実績の概要 |
昨年度までにF8BTを用いた両極性トランジスタを得ることに成功していたが、良好な発光特性は得られていなかった。本年度は電流特性を改善し、発光強度を向上させること、ホスト分子の励起子をエネルギー移動によりゲスト分子の発光に変換することを目指した。電極の表面修飾による電荷注入特性の改善に加え、ゲート絶縁層表面に自己組織化単分子膜を設けることで輸送特性の改善を図ったが、目立った改善が得られなかったため、既に発光が得られていた横型電気化学発光セル(LEC)を中心に検討を進めた。まずエネルギー移動を経た発光を得るためF8BTをホスト分子として、ゲスト分子を探索した。赤色蛍光材料であるDCJTBとの混合膜において、電流励起発光特性を測定し、F8BTからのエネルギー移動を介したDCJTB由来の赤色発光が得られることを見出した。この混合膜にさらにイオン液体を加えたLECにおいても同様の発光特性が得られることを確認した。並行して単一光子測定系の整備を進めた。 一方、LECの特性改善に向け、変位電流評価法(DCM)を用いた素子特性解析手法を提案した。これまで、電解質の再分布により素子特性が過渡的に変化するLECでは有効な解析手法が少なく研究開発の障害となっていた。我々はDCMにより、LECのドープ状態と発光効率の相関が解析できること、特に過渡特性の解析に有効であることを示した。これによりLEC動作特性の解明が進み、今後の素子作製条件や材料選択の最適化につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FET構造では大きな進展は見られなかったが、LECではほぼ目的の特性を達成した。単一光子測定系の整備、ナノギャップ電極の作製も順調である。一方、DCM法の適用による過渡特性解析など当初の予定外の成果も得られた。全体として当初の計画に沿い順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
既にエネルギー移動による発光が得られているF8BT-DCJTB系を中心に検討を進める。F8BT-DCJTB混合膜をギャップ幅10~数十nmのナノギャップ電極上に作製し発光特性を解析する。結果に基づき、イオン濃度、ドーパント濃度を調整し単一分子発光を得る。必要であればナノギャップ電極のデザインに変更を加える。一方、F8BTの発光スペクトルはブロードなため、その背景光が単一光子検出の問題となる可能性がある。その対策としてホストを青色発光材料(F8など)に変更し背景光を抑制することも検討する。 LECでは印加電圧波形は発光特性制御の重要な要素となる。DCM法を用いて電気二重層、電気化学ドーピング形成・緩和過程等を解析し、素子構造および印加電圧波形を最適化する。以上の検討よりナノギャップLECからの単一光子検出に挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
素子作製に使用する有機半導体ポリマーとイオン液体の一部を企業より提供していただくことができたこと、および材料の検討が予想以上に順調に進んだことから、当初計画より物品費(消耗品)を節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
材料費で余裕ができた分は、当初計画で断念した光学系の拡充に充てる。その他は、当初計画通り進める。
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