遷移金属水酸化物系において高品質のCo5/6Fe1/6(OH)2板状結晶を合成し、さらに酸化処理などによってCo(II)5/6-Fe(III)1/6層状複水酸化物に変換することができた。化学剥離処理から得られたナノシートはこれまで研究されてきた単層水酸化物ナノシートM(II)2/3-M(III)1/3と異なる2層単元構造を持つことが分かった。この上で、Co(II)5/6-Fe(III)1/6水酸化物ナノシートをナノビルディングブロックとし、溶液自己組織化プロセスなどを利用して、酸化グラフェンとのヘテロ複合化を図り、ナノからマクロスケールでイオン・電子移動が制御された構造体を構築し、電極触媒としての電気化学特性を評価した。特に、水酸化物ナノシートの遷移金属組成(Co-Fe-Ni-Mn等)の最適化を重点的に行い、ヘテロ金属イオンの間の電荷移動を誘導することによって、還元型酸化グラフェンとヘテロ複合したナノ電極触媒がアルカリ性環境における0.3V以下の過電圧を達成した。 回転電極触媒測定法などの分析・評価手段を活用することにより過電圧、反応電子数などを解析した結果、遷移金属の配位環境及び電子状態が触媒活性に大きく影響することが分かった。多くの遷移金属酸化物や水酸化物が電極触媒として研究されてきたが、6配位化合物にほぼ限定されている状況である。新しい触媒材料系を開発するため、高度な配位制御によるユニークな配位構造を持つナノ物質の創製が触媒活性の大幅な向上につながる実験結果を得た。
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