研究課題/領域番号 |
15K13297
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
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研究分担者 |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノインプリント / 酸化物ガラス / 微細構造 / 応力腐食 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が独自開発した『電圧印加ナノインプリント法』により、酸化物ガラス表面の化学組成をナノパターニングし、次に、『コロナ放電処理』によって、高屈折率材料、磁性材料、導電材料などの機能性材料を、パターンニグされたガラス表面に選択堆積することで、サブ波長光学素子、光磁気光学素子、メタマテリアルなどの微細構造素子の実現を目指している。 今年度は、これまで未解明であったアルミノシリケートガラスへの電圧印加インプリントと、その後のアルカリ水溶液でのエッチングでガラス表面に形成されるモールドとは異なる微細構造の形成メカニズムを解明した。 周期700 nmの1次元周期モールドを用いてアルミノシリケートガラスへの電圧印加インプリントを行ったところ、高さ55 nmの反転構造が形成された。この試料を30分間KOH水溶液でエッチングすると、突起先端が選択的にエッチングされ、モールド形状とは異なる構造が現れた。このような現象は、周期5ミクロン以上のモールドを用いた場合には見られなかった。エッチング前のガラスのTEM-EDS分析の結果、特異な形状が形成される表面付近にはNaが存在せず、Al, Si, Oのみで構成される均質な非晶質であった。したがって、エッチング後の構造は、Naの欠乏による体積収縮あるいは残留応力などに起因した化学的耐久性の変化が関係していると推察された。このような現象は、ソーダライムシリケートなどのアルカリ土類イオンを含むガラスでは見られず、極めて特異な現象であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで原因が不明であったアルミノシリケートガラスへの電圧印加インプリントで表面に形成される微細構造の形成メカニズムが明らかになったことから、論文投稿を準備している。また、ソーダライム系の多成分ガラスには見られない特殊な現象であることと、アルカリイオンの移動度が高いことから、本研究の次のステップである選択堆積による高アスペクト比構造の形成において極めて重要な知見が得られた。したがって、本研究は、概ね順調に進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
アルミノシリケートガラスへの電圧印加インプリントで見られるNa欠乏層の体積収縮あるいは残留応力と化学的耐久性の変化との相関を定量的に考察し、論文、学会発表などの成果の発信を行う。また、本研究の第2ステージであるコロナ放電処理による選択堆積の研究に着手する。当面はSiO2粒子の堆積による高アスペクト比構造の形成を進め、その後、GeO2などの高屈折率材料やAg2Oなどの還元によって金属化する材料などに展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費節減を行ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電圧印加インプリント装置およびコンプレッサー等の付帯設備の定期点検や、消耗品の購入、共用機器の使用料、研究成果発表のための旅費等で予算を使用する計画である。
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