本研究では、従来未踏のナノ微粒子上の室温原子層堆積法の構築に取り組み、酸化物による超格子ナノ粒子、酸化物スーパーアトムの作製を試み、高感度センサーマテリアル、可視光応答触媒、3Dプリンタ造形用の機能ナノ粒子の可能性を検討する研究である。 本年度では、これまで構築してきたロータリーポンプ真空ベースの室温原子層堆積法を活用し、Auナノ微粒子を原料として、酸化物半導体である酸化チタンを最大数十ナノメートルレベルで均一被覆することに成功している。また、微粒子をサセプタ表面に固着させながら、メカニカルスクレーパーで攪拌することで、微粒子の凝集を防ぎながら、酸化物半導体を被覆できることを明らかにした。さらに、ナノ微粒子を有機溶媒で回収し、濃縮して、エレクトロスプレー法による基板塗布をする方法を検討し、同微粒子をチャネル膜とするデバイス製造法の検討を進めた。 本研究の副成果ではあるが、酸化チタン以外の酸化物として、SnO2の室温原子層堆積も検討し、0.0139nm/cycleの製膜速度を実証した。製膜の制御性を高めるために、反応のモデル化を試みた。さらに室温製膜でありながら、半導体として機能すること、さらに薄膜トランジスタとしての利用可能性も明らかにすることができた。室温製膜であるために、界面での固相拡散を抑え、急峻な界面を実現できる可能性がある。 本研究ではナノサイズ微粒子の酸化物によるコアシェル構造を作製する方法の開発研究であるが、本研究により、ナノ粒子製造とそのデバイスプロセスについて、モデルとなる製造手法を獲得できたと考えられ、上記機能粒子の創生研究の端緒となったと考えられる。
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