本研究では、界面活性剤を配向させて親水基―疎水基からなる液液界面をソフトテンプレートに用いた新規溶液プロセスにより、酸化鉄及び遷移金属置換フェライトナノシートの作製について研究を行ってきた。その中で液液界面を積極的に利用するプロセスが有効であることを見出したので、研究期間を延長してこれに取り組んだ。 遷移金属置換フェライトナノシートの報告例は限られているが、本研究では液液界面を積極的に利用することにより置換フェライトナノシートの作製が可能であることを見出した。まず初めに金属オレイン酸錯体の水熱処理による置換フェライトナノシートの作製に取り組んだが、錯体中の不純物によりシート状に形態制御することが困難であった。一方、界面活性剤が配向した液液界面をソフトテンプレートとして、そこに溶液を滴下する共沈法では、コバルトフェライト及びニッケルフェライトナノシートの作製が可能であった。このことは遷移金属置換フェライトナノシートが80℃以下という比較的低温で簡便に作製可能なプロセスの確立に成功したと言える。 本研究で開発した有機溶媒に分散させた鉄オレイン酸錯体の水熱処理は、界面活性剤を配向させた液液界面を用いることによって平面サイズが数百nmを超える酸化鉄ナノシートの作製が可能であり、さらにこの液液界面を利用した共沈法では平面サイズがさらに大きく最大で2 µm近い遷移金属置換フェライトナノシートの作製が可能であった。それぞれの条件の最適化を進めることによって、さらに高アスペクト比を有するフェライトナノシートを再現性良く作製するプロセスが確立できると考えられる。
|