研究課題/領域番号 |
15K13306
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森 茂生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20251613)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ローレンツ顕微鏡 / 磁気的微細構造 |
研究実績の概要 |
ローレンツ顕微鏡法によって磁性材料を観察する手段として主にフレネルl法とフーコ法がある。また、小角電子回折法は数百mものカメラ長を用いて微小な偏向角(μrad程度)の回折や散乱を観測する方法である。本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、電子光学レンズ系の制御により、同一領域から小角電子回折パターンおよびフーコ像を取得できる微細構造評価法の構築を行うことを目的としている。以下に平成27年度に得られた研究成果を示す。 (a)汎用型電子顕微鏡を用いて小角電子回折スポットによるフーコー法を可能とする電子光学系を構築した。本光学系では、対物レンズをオフにし対物ミニレンズと一番上にある中間レンズによって回折パターンを制限視野絞りの位置に作ることによりFoucault法を行う。さらに中間レンズ1の電流値をJust Focusの値からずらすことによりFresnel法が可能である。また中間レンズの値を調整することにより制限視野絞りから上の光線図は同じ状態で無磁場下においてBragg回折(~10-2 rad)を観測することに成功した。 (b)La1-xSrxMnO3(0.15<x<0.30)単結晶を用いて、ローレンツ顕微鏡観察を行い、無磁場中では各結晶面において、数百nmの周期で規則的に配列したブロッホ磁壁を持つストライプ状180°磁区構造が形成されていることを明らかにした。次に、結晶面に垂直にH = 224 mTの磁場を印加したところ、ストライプ状磁区がランダムに分断された後、楕円状の磁区構造(磁気渦構造)に変化することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、LaB6型透過型電子顕微鏡を用いて、対物レンズ、中間レンズおよび投影レンズ系のレンズ電流値を制御することで、小角電子回折スポットによるフーコー法を可能とする電子光学系を構築した。また、本光学系では、対物レンズをオフにし対物ミニレンズと一番上にある中間レンズ(中間レンズ1)によって回折パターンを制限視野絞りの位置に作ることによりFoucault法を行うことができる。中間レンズの値を調整することにより制限視野絞りから上の光線図は同じ状態で無磁場下においてBragg回折(~10-2 rad)を観測することに成功した。以上の理由から、研究は順調に進んでいると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、小角電子線パターンとフーコ像およびナノビーム回折パターンを取得できる微細構造評価システムを構築する。本手法をらせん磁性体に応用し、磁場下での磁気的微細構造と構造的微細構造観察を行い、強誘電相とらせん磁気相の相共存・相競合状態を明らかにする。 (1)室温以上に磁気転移温度を持つ六方晶フェライトBa2-xSrxZn2Fe12O22 (Y型)および関連物質に着目し、磁気的微細構造をローレンツTEM法および小角電子線散乱法により調べる。特に、Y型六方晶フェライトは、磁場下で不整合な周期を持つらせん的磁気構造から整合な周期構造を経てコリニアなフェリ磁性体へと変化することから、これらの磁気構造の変化に伴う磁気的微細構造について精力的に調べる。また、中間相Ⅲの領域で磁場誘起の強誘電相が出現することから、中間相Ⅲでの磁気的微細構造と構造的(強誘電)微細構造について明らかにしていく。 (2)Y型六方晶フェライトにおいて、Feサイトの一部をAl置換した試料で、弱磁場(~10mT)下で強誘電相が出現することから、Al置換によるらせん構造による磁気的微細構造の変化や磁場応答について調べる。また六方晶フェライトには、6種類の結晶構造が異なる物質群が存在する。その中でも、M型六方晶フェライトは、室温において電気磁気効果が発現することから、M型六方晶フェライトでのらせん構造による磁気的微細構造と磁場応答についても調べていく。
|