我々は気水界面に展開した高分子ナノ粒子に水銀ランプの紫外線 (254 nm)を照射すると、中空粒子が得られることを見出した。本研究では、指向性の高いUVレーザ光(266 nm)を通常の紫外線ランプの代わりに用いて、空孔サイズや空孔位置の精密制御にチャレンジすることを目的としている。本年度は、粒子の中空化に及ぼす(1)UVレーザの照射時間の影響、(2)レーザ光の照射角度の影響について検討した。さらに、レーザ光照射の方位角を変えることによる空孔数の制御についても検討した。 水面上に展開した粒径500 nmのポリスチレン粒子にUVレーザ(35 mW/cm2)を60秒間照射すると約50 nmの空孔が生成するが、空孔サイズは80秒の照射時間では120 nm、120秒では250 nmまで大きくなることがわかった。また、空孔の形態は照射時間が長くなると球形から楕円形に徐々に変化し、120秒では空孔がポリスチレン粒子を貫通した。UV光の照射角度によって、空孔形成位置を中央部から周辺部に精密に調整できることも証明した。また水銀ランプとUVレーザの比較を行ったところ、UVレーザを用いた方が空孔サイズ分布は小さく、さらに空孔の形成位置は均一であり、精密な空孔制御に向いていることが示唆された。 水面上のポリスチレン粒子膜を回転させることによって、UV光照射の方位角を変えたところ、2つの空孔が形成することを確認した。すなわち、照射方位角によって空孔数を自在に制御できることを証明した。この場合、粒子膜の回転軸の中心とレーザ照射位置を一致させることが重要であることも明らかとなった。
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