流体は微小空間へ閉じ込められることにより通常と異なる物性を示すことが知られている.本研究では,2枚のガラス基板の間の薄い空間に,超臨界二酸化炭素(SC-CO2)を閉じ込めたマイクロデバイスを作製して,CO2の超臨界状態での特異な熱物性を測定し,微小空間への閉じ込めによって現れる特性がデバイスとして応用できるかどうかを検討することを目的とした. 臨界点付近での熱的性質を計測するために,自作の熱抵抗変化計測装置を用いた.2本の銅棒に熱電対を等間隔に設置し,それらの間にSC-CO2を閉じ込めるマイクロデバイスを挟み,上部と下部をそれぞれ加熱・冷却して銅棒の温度変化からマイクロデバイスに依存する熱抵抗変化を計測した. 2枚のガラス基板間の厚さは,異なる速度でスピンコートした高分子フォトニースの厚さで決定し,パターニングしたフォトニースを塗布したパイレックスガラスと,CO2が流れる穴を開けたもう1枚のパイレックスガラスをSUS製の土台と蓋で押さえ込むことで,2枚のガラスの間にSC-CO2が封じ込められるようなマイクロデバイスを作製した.まず,SC-CO2を閉じ込める実証実験を行い,圧力を変えたときの熱抵抗変化から超臨界状態の観測を行い,SC-CO2層の厚さを変えたときの熱抵抗変化の違いを評価した. 圧力を大気圧から9MPaの圧力まで上昇させたとき,臨界点と考えられる圧力近傍で確かな熱抵抗の低下が観測された.さらに,マイクロ空間に閉じ込めることで0.2MPaの臨界圧力のシフトが観測できた.微小空間に閉じ込めた効果によって現れる物性変化が実証できたため,臨界点付近で状態が温度変化に敏感であることに基づいた機能性デバイス,センシングデバイスへの応用の可能性を示すことができた.
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