研究課題/領域番号 |
15K13318
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北森 武彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60214821)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拡張ナノ空間 / 化学反応 / 溶液物性 / 表面効果 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、ガラスのナノ加工/低温接合、fL/秒の圧力流体制御、単一分子検出など、100 nmの拡張ナノ空間の基盤技術を世界に先駆けて実現して、支配的な表面効果による様々なユニークな溶液物性・化学特性を明らかにしてきた。そこで本研究では、10 nmスケールの流路とその中で支配的な壁面‐分子間の電荷反発などの表面効果を利用して単一分子の輸送経路を制御し、ひいては確実な単一分子衝突・反応システムという化学における理想的な反応ツールを実現するための基盤技術を開発することを目的としている。 平成27年度はナノ加工における電子線露光条件やドライエッチングの条件を検討して、10 nmスケールのガラス流路作製技術を確立した。そこで平成28年度は、外場を制御するための基盤技術を開発した。自発分極する強誘電体の基板にスパッタにより厚さ5 nmのSiO2層を製膜した基板によるナノ流路を作製した。これにより、強誘電体の効果により流路表面の負電荷を増強したデバイスを実現した。一方、研究を進める中で、ナノ流路に溶質分子が導入されないことを見出した。これは、静電力による表面相互作用や流路サイズによるエントロピーの効果が支配因子であると考えられる。本研究目的である単一分子の輸送と衝突反応を達成するためには、溶質分子をナノ流路に導入することが不可欠である。そこで当初の研究計画を見直して研究期間を延長し、表面電荷などの効果に着目して溶質分子導入の検証実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、ナノ流路への溶質導入に関する新たな発見があった他は、外場制御技術の開発などを順調に達成できている。溶質導入実験で得られる知見を取り込むことで、延長期間内にナノ流路での溶質の軌道制御に取り組むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
溶質導入実験の知見をもとに流路を再設計する。外場制御機構を組み込んだデバイスを作製し、ナノ流路表面近傍に発生する静電場が溶質の軌道にどのような影響を与えるかを確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進める中で、10-100 nmの拡張ナノ空間に溶質分子が導入されないことを見出した。本研究目的である拡張ナノ空間での単一分子の輸送と衝突反応を達成するためには、溶質分子を拡張ナノ空間に導入することが不可欠である。そこで、溶質導入の検証実験のために研究費を使用して、表面効果やエントロピーの効果が拡張ナノ空間への溶質分子の導入率に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額の使用計画 |
ナノ流路のデバイスを作製するための基板材料費、マイクロ・ナノ加工費、流路制御のための消耗品に使用する。
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