大腸菌は、二つの極を持った桿状の形をしている。この形状は、大腸菌の細胞壁を分解して、一度球状のスフェロプラストという構造にしてから培養しても桿状の形に回復することが報告されている。このように、大腸菌は、自身の極性を維持する機構を持っている。本研究では、物理的に大腸菌の形状を変化させ、大腸菌の形状制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 まず、形状制御に重要な役割を果たしていると考えられているMreBタンパク質がRFPで蛍光標識された大腸菌を用いてMreBの動態と大腸菌の極性の関係を調べた。具体的には、MreB標識大腸菌を抗生物質セファレキシン存在下で培養し、複数細胞が連結した、長いフィラメント上の大腸菌を得た。このフィラメント状の大腸菌の細胞壁を分解して、通常の数倍程度の直径を持つ大型のスフェロプラストを作製した。こうして得たMreB標識大腸菌の大型スフェロプラストを寒天培地上で培養しながら、MreBの動態を数時間観察することに成功した。その結果、大型スフェロプラストの形状が部分的に回復するのが観察された。過去の報告では、回復過程でMreBが局在しない部分が極になり、桿状になることが示唆されていたが、本研究では、大型スフェロプラストの極にもMreB の局在が見られた。MreBの局在がスフェロプラストを大型化することによって変化した可能性もある。今後はウェルに封入して形状を強制的に変化させた大型スフェロプラストのMreB動態も観察し、大腸菌の形状制御機構を明らかにしたいと考えている。
|