モルフォ蝶の鱗粉に代表されるような数100nmサイズの樹状構造の変形で制御される「構造色」を利用して,同一の構造で様々な物理量を計測するマルチ構造色センサーを実証した。さらに,構造色センサーの大面積化と大量生産手法として,新たに開発した光硬化性シリコーンゴムと真空紫外光を利用した,モールディングによる構造色センサーの複製技術にも挑戦した。 フォトリソグラフィーでセンサーの鋳型となるようなパターンをフォトレジストで形成しておき,構造色センサーの必要レイヤー分だけSiとAuの多層膜を積層した。次に,鋳型となっているレジストを剥離(リフトオフ)後,Si部分をドライエッチングで樹状の構造体センサーを作製した。まずは深さ方向へ垂直に異方性エッチングを行い,次にエッチング条件を変更してSiのみの選択的等方性エッチングに切り替えることでサイドエッチングを進め,所望の樹状構造を作製した。その後,本構造を鋳型としてシリコーンゴムを流し込み型取りすることで,鋳型の反転パターンを有するシリコーンゴム製の構造を作製することに成功した。その際,真空紫外光を照射してシリコーンゴムを部分的にガラス化することにより,型取り後のゴムの変形をある程度押さえることに成功した。 型取り課程の変形により構造の精度は問題が残るものの,作製したシリコーンゴム製の構造色構造に対して,温度変化させながらその反射率特性を評価したところ,温度に応じて色が変化する様子が観察され,熱膨張による構造変化で温度を光に変換して計測可能であることが実証された。これにより,モールディングによる大量生産の可能性を示唆するデータが得られた。
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