研究課題/領域番号 |
15K13324
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
寺尾 京平 香川大学, 工学部, 准教授 (80467448)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ構造形成 / DNA1分子操作 |
研究実績の概要 |
本研究は、DNA分子で構成される複数種のナノデバイスを、超高密度に配置・実装する技術を開発するものである。研究代表者がこれまでに実現した独自技術であるDNA分子の非侵襲操作技術を利用することにより、DNA分子をマイクロピラー電極間を橋渡しする状態で懸架し、溶液中にDNA Highwireと呼ぶ新たな1次元構造を形成する。これをナノデバイス実装の足場として利用することにより、従来は散在して機能していたDNAナノデバイス同士を自己組織化を利用してナノメートルサイズのピッチで高密度かつ高精度に実装する。研究期間内に本提案原理を実証するため、金マイクロピラー電極間にDNA Highwireを形成し、塩基配列の相補性を利用した自己組織化によるDNAナノデバイスの配置を実証することを目標とする。研究目的の「DNA Highwireを用いたナノデバイス実装」を期間内に実現するため、以下の6ステップで実験技術の構築と検証を行う。平成27年度は(1)ナノ構造体を微細加工プロセスによって作製し、(2)レーザー操作光学系の制御システムの構築を完了させ、(3)DNAを固定するためのアミノ基修飾金マイクロピラー電極基板を作製に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ナノ構造体の製作:これまでのDNA操作の実績に基づき、様々な長さのDNA分子を安定に捕捉し操作できるナノ構造体のデザインを決定し、電子線リソグラフィと紫外線リソグラフィを組み合わせた作製法により100万個程度一括形成し、リフトオフ法により水溶液中に回収する。本年度は特に、DNAを操作する際に滑ることなくDNA鎖方向に伸長操作が可能なナノ構造体のデザインを検討し、表面に微細な凹凸構造を形成することで操作距離を伸ばすことに成功した。 (2)レーザー光学系制御システムの開発:配線操作に必要な2軸の光ピンセット光学系をすでに構築している。1軸のレーザーはガルバノミラーにより操作することができるようになっている。そこで、光トラップ位置を作業者が顕微鏡観察画面を見ながら、リアルタイムで操作できるようにするため、PCベースの制御システムの構築に取り組んだ。必要な装置の使用選定・購入・接続を行っており、今後テストを進める計画である。 (3)アミノ基修飾金マイクロピラー電極の作製:ピラー電極と電源をつなぐ平面電極パターンをガラス基板上に作製した上に金ピラー電極を作製する。ピラーを電極として機能させるため、スパッタリングによりピラー表面を金で被覆する。その際、垂直壁面部分が完全に被覆されない可能性があるため、スパッタ条件の検討を行った。結果として側面にも金を均一に被覆することを達成した。電極と接触しただけではDNA分子を電極に接合できない。そこで、金表面に正電荷を持つアミノ基をピラー電極に化学修飾することで、負電荷を持つDNAを静電的に固定する。今後、金チオールにより形成した自己組織化単分子膜に、カップリング反応によりアミノ基を多数もつポリリジン分子を固定することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
(4)DNA Highwireの形成実験:操作時の粘性抵抗力によるナノ構造体トラップ姿勢の変化とトラップからの脱離現象の観察から最大トラップ力、安定したトラップ姿勢が得られる限界速度を決定し、その発生力・速度以下の領域で配線操作を行う。DNAには操作実績を有しているゲノムマーカー用の0.1-1ミリメートル長の市販のDNAサンプルを使用する予定である。蛍光顕微鏡下でリアルタイム1分子観察を行いながら、金ピラー電極への固定化と懸架実験を行う。また、並行して操作に必要な光学系制御システムの構築と高度化を27年度に引き続き進める。 (5)原理実証用ナノデバイスの作製:DNA Highwireの一部分の配列と相補的な配列をもつ短鎖DNAもしくはPNAなどの人工核酸を合成し、量子ドットなどのナノサイズの蛍光粒子に固定化することで、原理実証用のナノデバイスとして用いる。複数種のターゲット配列に対して異なる蛍光波長のナノ粒子を使う。 (6)ナノデバイスの実装実験:金表面のアミノ化に取り組み、達成された後、提案手法の原理実証のため、作製したナノデバイスである複数種類の蛍光ナノ粒子をDNA Highwireに対して実装する。塩基の相補性を利用したハイブリダイゼーション処理により、粒子をHighwireに固定化し、多色蛍光観察により、粒子の結合・配列の可視化評価を行う。
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