研究課題/領域番号 |
15K13328
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宮崎 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, グループリーダー (10262114)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / メタマテリアル / メタ表面 / 熱放射 / 赤外光 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、メタ表面の共鳴の顕著なギャップ敏感性を利用して、1000℃という高温の熱放射を10MHzという高速で変調することに挑むことである。具体的には、波長4μmの中赤外光を共鳴放射するタングステン製メタ表面のギャップ部を圧電素子で20nmだけ高速強制駆動する。周囲は常温に維持しつつメタ表面だけを高温に加熱するために、熱絶縁性と剛性を両立したSiN立体メンブレンという特異な構造を実現し、その先端面に、メタ表面を構成する金属パッチ配列と電熱ヒータを作り込む。 平成27年度は、まず、メタ表面を構成する金属ストライプ面と金属連続膜面のギャップを圧電素子で駆動できるメタ表面ユニットを、精密調整された状態で一体化する方法の確立を目指した。メタ表面の材質として、金属にはAuまたはITO、誘電体にはAl2O3を、基板には合成石英を採用した。金属ストライプを形成した基板と金属連続膜面を形成した基板を対向させ、最大周波数1.7kHzの圧電素子に高電圧を印加して押し出した状態で2面を押し当てて、密着状態でエポキシ樹脂にて接着・硬化させた。圧電素子電圧のON/OFFにより、波長3.3μmにて、610%の吸収率(放射率に等しい)の変調が可能であることを確認した。しかし、現時点では2つの表面の完全な密着が実現していない。これはメタ表面ユニット全体の剛性不足に起因しており、密着状態が安定に維持できないためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、金属ストライプ面と金属連続膜面の密着状態が実現していないため、設計通りの熱放射波長が確認できていない。メタ表面材料としては、1000℃という高温での動作を可能とするため、金属にはW、誘電体にはHfO2を用い、また、基板にはCO2計測に必要な4.26μmにて十分な透過率を持つサファイアを計画していた。しかし、今年度はこれらの材料のナノ加工条件を確立するに至らなかった。また、10MHzでの超高速動作を可能とするため、圧電素子としては、霧化器や超音波診断機用の数MHz~数10MHzの円板状発振子を用いることを計画していたが、現時点では取扱いの容易なkHz帯圧電素子ブロックを用いている。本研究のポイントの1つに、軽量で熱絶縁性が高く、剛性の高い立体メンブレン構造を採用することがあるが、これにも着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは基盤構造となるメタ表面ユニットを高剛性化し、圧電素子のON/OFFにより、高精度に2つの表面の密着/離脱を制御できるようにする。また、Wのナノ加工の実現、HfO2コーティングによる耐熱性の確認、立体メンブレン構造の試作により、初年度の遅れを挽回する。本研究の最低限の狙いは、ギャップの機械的駆動により熱放射を変調できることを示すことであるので、金属連続膜面に電流を流し、実際の熱放射の動的制御の実証を優先する。その上で、1000℃、10MHzという温度・周波数の実証を目指すこととする。
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