研究課題
本研究では、磁性強誘電体や磁性体に特徴的な性質を利用することで、巨視的な強誘電ドメインや磁気ドメインの「光による制御」を目指すことに挑戦した。具体的には、フェムト秒レーザー照射による数々の磁性体からのテラヘルツ電磁波放射現象の観測ならびに放射したテラヘルツ電磁波を利用して、従来の実験手法では測定できない新たな磁気ドメインイメージング法の開発を行った。27年度、室温においてフェリ磁性を示す強誘電体からのテラヘルツ電磁波放射現象の観測に初めて成功し、この現象が、高速磁化変調による磁気双極子放射であることを明らかにした。さらに、強誘電性を示さないフェリ磁性体からも、磁気双極子放射によってテラヘルツ電磁波が発生することを初めて見出した。磁気特性を超高速に制御するためには、磁化などの物理量の平均値を測定することだけでは不十分であり、磁気ドメインを実空間で観察することが重要な課題である。このような現状の中、試料を二次元的に走査しテラヘルツ電磁波振幅の場所依存性を測定したところ、磁化ベクトルが簡便に可視化できることを見出した。すなわち、磁化ベクトルの方向を決定することのできる新たな磁気ドメインイメージング手法を開発した。今年度は、従来構築していた透過配置でのテラヘルツ電磁波放射光学系に加えて、反射配置で測定を行える新たなテラヘルツ電磁波放射光学系を構築した。この光学系の構築によって、光学遷移を直接励起できる実験が行えるようになった。その結果、ナローギャップの半導体からのテラヘルツ電磁波放射現象を見出した。特に、強いスピン軌道相互の結果、バンドがスピン分裂する極性半導体において、円偏光励起によるスピン流生成に伴うテラヘルツ電磁波放射現象を見出した。このようなスピンに依存した新しいテラヘルツ放射機構を見出したことは、予期していなかった発見である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
ACS Photonics
巻: 3 ページ: 1170-1175
10.1021/acsphotonics.6b00272