研究課題
本研究では、単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいて、電子の未利用自由度であるバレー自由度を利用する新たな光エレクトロニクス技術を開拓することを目的として研究を進めてきた。特に、電荷密度の変調が励起子バレー分極に与える影響を調べるため、電荷注入のもとで光学測定を行うための電界効果トランジスタデバイスの作製を進めたが、試料上電極の作製プロセスに起因する試料ダメージの影響により、プロセス後の試料では、欠陥準位からの発光が支配的となってしまい、固有の励起子スペクトルに関する検討を行うことが難しいことが引き続き課題となっていた。そこで、本年度の研究では、別の研究で見出された遷移金属ダイカルコゲナイドとグラフェンの積層構造化による電荷密度変調効果に着目し、電荷密度の変調が励起子バレー分極に与える影響を調べた。その結果、電子ドープ条件下で励起子バレー分極度の変調が確認され、特に、電荷密度の増加のもとで理論的に予想されていた100K程度の温度領域でのバレー分極度の大幅な向上が確認された。これらの結果について詳しい解析を行ったところ、観測されたバレー分極度の大きな変化は、励起子のバレー分極緩和に影響を与えると予想される積層構造化に起因する励起子発光寿命の変化や励起子線幅の変化だけでは説明することができず、電子ドープによる相互作用の変調が生じたことを示すものであることがわかった。これらの結果は、原子層物質積層という物質工学的手法により励起子のバレー分極のエンジニアリングが可能であることを示すものである。
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Nature Communications
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