研究課題/領域番号 |
15K13339
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
横山 新 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 教授 (80144880)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光メモリスタ / メモリ機能 / 光導波路 / 有機フォトクロミック材料 / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
電気回路では、抵抗、インダクタンス、キャパシタンスに続く第4の受動素子としてメモリスタが注目されている。メモリスタは通過した電荷量を記憶し、それに伴って抵抗が変化する受動素子である。これにより、フラッシュメモリを超える高密度・高速・低消費電力・耐放射線メモリや論理演算素子の可能性が示唆され、すでにReRAM(抵抗変化型メモリ)として動作確認されている。本研究では、光回路におけるメモリスタ、すなわち「通過した光の量を記憶し、それに伴って光透過率が変化する光素子」の可能性を探る。これが実現できれば、光通信、光配線集積回路、知能集積回路等の分野に大きなインパクトを与えることができ、情報社会に計り知れない恩恵をもたらすものと期待される。本研究では、光メモリスタを実現する方法を研究する。 H27年度は光メモリスタとして可能性のある材料の調査を行った。ハロゲン化銀の光化学反応によって銀微粒子を生成する方法では、熱反応によって生成した銀微粒子が元のハロゲン化銀に戻ってしまう。一方、最近注目されている有機フォトクロミック材料では、紫外線照射によって着色し、可視光照射によって透明体にもどり、熱的な変化は少ないものが知られている(ジアリールエテンが有名)。この物質を用いれば、光メモリスタが実現できると考えられる。しかし、この物質の着色時定数、戻り速度等の詳細データはまだ不十分なことが明らかになった。H28年度はこの点を明らかにし光メモリスタへの応用可能性を調べる。また、光メモリスタをバックプロパゲーション型3層ニューラルネットワークの結合率調整部分に使用した場合の解収束性を調べるプログラムをC++ソフトウェアによリ作成した。H28年度はこのプログラムを用いて光メモリスタをニューラルネットワークに応用した場合の有用性を明らかにすると共に、上記フォトクロミック材料を用いて有用性を実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで提案していたハロゲン化銀の光化学反応によって銀微粒子を生成する方法では、熱反応によって生成した銀微粒子が元のハロゲン化銀に戻ってしまうことが分かった。すなわち記憶情報が熱的に失われてしまう。この効果のない材料を調べた結果、一部の有機フォトクロミック材料が、光メモリスタ材料として有望であることが判明した。そこで次年度は、この物質を中心に研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
有望とされる有機フォトクロミック材料、ジアリールエテンでは、400nm以下の波長の紫外線照射で、550nm付近の波長領域の吸収係数が増加し、600nm以上の可視光照射によってもとの透明体にもどる。しかし、この吸収増加および戻り速度の照射波長および温度依存性は十分に解明されていないので、この点を明らかにすると共に、反応速度の向上を目指した研究を推進する予定である。
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