研究課題/領域番号 |
15K13340
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
沢田 正博 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (00335697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 軟X線吸収磁気円二色性 |
研究実績の概要 |
本研究では、広島大学放射光科学研究センターの軟X線放射光ビームラインにおいて、実用材料の低真空または大気圧下における軟X線吸収磁気円二色性(XMCD)実験が可能な測定環境構築を目指す。この環境構築のために、軟X線差圧通過機構、ディテクタユニット、大気圧試料セルの要素技術を確立することが重要になる。最終的に、これら要素技術をインテグレーションしてシステム化を試み、実用材料の実用環境場での計測に進むことになる。また、測定環境構築と並行して、実用材料としての応用が期待される磁気積層構造を持つ試料やナノ粒子試料の作成や物性評価を進めて、最終的に、新たに開発された測定環境で、これらの試料について環境場を可変したXMCD測定を実施する計画である。本年度の具体的な研究実績は、以下の通りである。
(1) 低真空または大気圧下における軟X線測定環境を実現するための要素技術の研究として、超高真空ビームラインと低真空または大気圧下環境の分光測定槽を分離しながら軟X線を導入するための機構を検討した。当初の差動排気システムによるセパレーションは困難であり、極薄メンブレンを活用する方法が妥当であることが明らかになった。ビームラインにおける軟X線ビームの光線追跡シミュレーションとメンブレンの透過率計算により、十分な軟X線を測定槽に導入できることが明らかになった。
(2) グラフェンや六方晶硼化窒素と強磁性層が接合するスピントロニクス界面ナノ構造について、試料作成を試み、X線吸収スペクトルとその磁気円二色性スペクトルの測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、低真空または大気圧下における軟X線吸収磁気円二色性(XMCD)実験が可能な測定環境構築と、実用材料としての応用が期待される磁性ナノ物質試料の作成を組み合わせて、放射光を用いた磁気測定計測を広く応用していく方針である。本年度までに、測定環境構築の技術要素開発の中で、軟X線の透過機構の検討を進めたが、ナノ磁性物質試料の作成や評価に時間を割いたために、ディテクタ系の検討やそれらの実装には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
軟X線の透過機構のビームラインへの実装にむけた試験を早期に行い、ビームラインのシステムとして機能するようにする。また、フォトンディテクタによる軟X線吸収試験測定を行い、測定に適したディテクタユニットの検討を急ぎ、最終的なシステムインテグレーションを視野に入れた設計につなげていく。最終的なシステムインテグレーションに必要な新規測定槽や排気システムの検討も早期に始め、最終年度でのシステム完成を意識した工程管理を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、軟X線を低真空または大気圧下に導入する技術研究とともに、フォトンディテクション機構の技術研究を進める予定であったが、本年度は測定対象となるナノ構造試料の作成と評価の試みを優先させた。このため、新規測定槽やフォトンディテクション機構の開発に関する予算執行が、新年度に繰り越されている。
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次年度使用額の使用計画 |
やや遅れている研究を確実に進捗させていき、研究計画において重要な要素をしめる技術研究を進めていく予定である。この進展に則して、時間的な損失が出ないように、検討が終わった要素ごとに実装のための準備を進めて、計画的に予算執行を行う。
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