下記の試料を対象として、フェムト秒パルスレーザー励起により発生するテラヘルツ(THz)電磁波を時間分解THz分光法により検出した。研究実績概要は、以下の通りである。 1. ノンドープGaAs(d nm)/p型GaAs(i-GaAs/p-GaAs)エピタキシャル構造(d=200、500、800)を対象として、THz電磁波時間領域信号の励起強度依存性の系統的な測定を行い、そのフーリエ変換スペクトルから、全ての試料において、コヒーレント縦光学(LO)フォノン-プラズモン結合(LOPC)モードの上下分枝[LOPC(+)とLOPC(-)]のTHzスペクトルを明確に観測した。LOPCモードの誘電関数に基づいて振動数のキャリア濃度依存性の解析を行い、LOPCモード振動数が光生成電子濃度によって決定されることが明らかとなった。即ち、i-GaAs/p-GaAs構造においても、昨年度のi-GaAs/n-GaAs構造と同様に、研究目的であるLOPCモードの周波数可変性(制御性)を実証した。具体的には、i-GaAs/p-GaAs構造の場合、LOPC(-)モードの周波数を2.6THzから4.9THzまで励起強度により変化させることができた。 2. i-GaAs(200 nm)/n-GaAsエピタキシャル構造を対象として、LOPCモードから発生するTHz電磁波の減衰ダイナミクスを詳細に調べた。その結果、LOPC(-)モードの寿命はLOPC(+)モードよりも短く、LOPC(+)モードの寿命はコヒーレントLOフォノンよりも短いことが明らかになった。この結果について、LOPCモードの位相緩和時間に関するモデルに基づき解析し、フォノン強度(LOPCモードに含まれるフォノン割合)がLOPCモードの寿命を支配しているという結果が得られた。
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