人体の動作をアシストするための装着型のロボットが注目を集めている。近年テキサス大学から発表された,釣り糸をコイル状に巻き上げた熱収縮型の人工筋肉(以下,「釣り糸人工筋肉」と呼ぶ。)は,このようなロボットに使用する人工筋肉として適していると考えられる。釣り糸人工筋肉はこれまでに提案されてきた導電性高分子などを利用した人工筋肉に比して,柔軟であり真柄強靭性に優れ,乾式で数%に及ぶ収縮性を示すなど,種々の優れた点を示す。 本研究では,作製環境を厳密に規定するために恒温槽内に釣り糸人工筋肉作製装置を構築し,作製条件を精密に規定することで「スーパー釣り糸人工筋肉」を開発することを目的としている。これまでに恒温槽内への作製装置の構築と,レーザー変位計を用いた熱収縮性測定環境の構築を行い,熱処理による安定化の条件についての詳細な検討と,種々の温度及び加重下で作製した人工筋肉の動作特性の評価を行ってきた。その結果,動作を安定化させる熱処理について,温度及び熱処理時間依存性を明らかとすることができ,また,温度上昇に伴い人工筋肉作製における成功率と適用可能な加重範囲の増大を見出している。 これらの実験において,人工筋肉の駆動にはヒートガンを用いた間接的な加熱を行ってきたが,本年度は人工筋肉への銀ペーストの塗布による直接的な駆動を行うとともに市販の銀メッキ裁縫糸による作製も行った。後者において,再現性の良いデータが得られたことから動作中の電気抵抗を測定したところ,従来は動作中の電気抵抗は収縮に伴って線形に微小な変化をするとされてきたのに対し,非線形に大きく変化することを見出した。 またこれまで問題となっていた測定装置の摺動抵抗は小型のスライドレールを使用することで軽減できることがわかった。
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