研究課題/領域番号 |
15K13343
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研究機関 | 神奈川県産業技術センター |
研究代表者 |
秋山 賢輔 神奈川県産業技術センター, 化学技術部, 主任研究員 (70426360)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素生成 / 光触媒効果 / 新エネルギー / 結晶工学 |
研究実績の概要 |
光触媒効果による太陽光を用いた水分解からの水素製造は、その高効率化に向けて可視光応答性が課題となっている。この課題に対して本研究では、鉄シリサイド半導体(β-FeSi2)の持つ化学的安定性、0.80eVと狭い禁制帯幅、赤外光領域においても1E5(/cm)以上と大きな光吸収係数を持つことに着目し、「鉄(Fe)とシリコン(Si)で構成されるナローギャップ半導体の鉄シリサイド半導体(β-FeSi2)」と「ワイドバンドギャップの炭化ケイ素(SiC)あるいは酸化物光触媒材料」との接合複合粒子を創生し、赤外領域まで光応答可能な半導体・複合材料を提案し、水素変換効率の高い接合構造への指針を明らかにすることを目的としている。 昨年度の成果に基づき、有機金属気層成長法を用いて、炭化ケイ素(SiC)、及びルチル型酸化チタン粉末表面への鉄シリサイド半導体ナノ粒子の成長検討を行った。鉄シリサイドの気相成長前に、予め金(Au)を導入することによって、ワイドギャップ半導体粒子表面に分散した鉄シリサイドのナノ粒子が形成され、半導体によるナノ複合粒子を実現した。この金の堆積量によって、鉄シリサイド粒子のサイズが制御可能であることが明らかとなった。金層は鉄シリサイドとワイドギャップ半導体との界面に導入され、良好なヘテロ界面を形成していることが確認された。 さらに、これらナノ複合粒子をアルコール水溶液中に懸濁し紫外光、可視光、及び近赤外光の照射下によって光触媒効果による水の半分解反応に起因した水素の発生が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炭化ケイ素(SiC)、及びルチル型酸化チタン(TiO2)粉末表面に鉄シリサイド半導体ナノ粒子が分散担持されたナノ複合粒子形成を有機金属気相成長法により実現した。成長前に金層を導入することで、接合面に数nmの金層が導入されたヘテロ界面が実現された。このAu層導入により、鉄シリサイド・ナノ粒子内で生成する光励起キャリアの電子を効率的に水分解反応による水素生成に用いることが実現された。 これら半導体ナノ複合粒子をアルコール水溶液中に懸濁し紫外光、可視光、及び近赤外光の照射によって光触媒効果による水の半分解反応に起因した水素の発生が確認された。 さらに鉄シリサイド半導体の複合構造検討の中で、鉄シリサイドのフォトルミネッセンス室温発光が予想外に確認された。
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今後の研究の推進方策 |
鉄シリサイド半導体をナノ粒子させた複合構造検討の中で、鉄シリサイドのフォトルミネッセンス室温発光が予想外に確認された。この結果は、本研究課題である光触媒材料としての高品質結晶の確認だけに止まらず、鉄シリサイドの発光材料としての応用につながる結果である。 そのため半導体・複合粒子での光触媒特性、及び室温フォトルミネッセンス発光特性に反映される結晶性を調査した一連の結果を学術講演会、論文にて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
鉄シリサイド半導体をナノ粒子化させた複合構造検討の中で、鉄シリサイドのフォトルミネッセンス室温発光が予想外に確認された。この結果は、本研究課題である光触媒材料としての高品質結晶の確認だけに止まらず、鉄シリサイドの発光材料としての応用につながる結果である。 そのため半導体・複合粒子での光触媒特性、及び室温フォトルミネッセンス発光特性に反映される結晶性を調査した一連の結果を学術講演会、論文にて報告する。
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次年度使用額の使用計画 |
一連の結果を本年度の上期に開催される国内、国際学会にて発表し、論文投稿する予定。 これらの発表費用に充てる予定。
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