光触媒効果による太陽光を用いた水分解からの水素製造は、その高効率化に向けて可視光応答性が課題となっている。これに対して本研究は、鉄シリサイド半導体の持つ化学的安定性、0.80eVと狭い禁制帯幅、赤外光領域でも1E5(/cm)以上と大きな光吸収係数を持つことに着目し、「鉄(Fe)とシリコン(Si)で構成されるナローギャップ半導体の鉄シリサイド半導体(β-FeSi2)」と「ワイドバンドギャップの炭化ケイ素(SiC)あるいは酸化物光触媒材料」との接合複合粒子を創生し、赤外領域まで光応答可能な半導体・複合材料を提案し、水素変換効率の高い接合構造への指針を明らかにすることを目的としている。 予め金層を導入した粒径150nmの炭化ケイ素(SiC)、及び酸化チタン粉末表面に有機金属気層成長法を用いて、鉄シリサイド半導体ナノ粒子の成長検討を行った。X線回折評価及び光吸収特性評価からこれら粉末上に鉄シリサイド結晶が合成されていることが確認された。電子顕微鏡観察からSiC表面に50-100nmの粒径からなる微細な鉄シリサイド結晶粒がSiC表面に分散して形成している様子が確認された。金層の導入によって気相成長させた鉄シリサイド結晶の成長機構が変化して分散粒子となること、さらに鉄シリサイド結晶内の欠陥密度が低減されることが明らかとなった。 これらの半導体複合粒子をアルコール水溶液中で可視光、及び赤外光を照射することで光触媒効果による水分解反応からの水素発生が確認された。
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