研究課題/領域番号 |
15K13345
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石谷 善博 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60291481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子干渉 / 縦光学フォノン / 金属半導体複合構造 / テラヘルツ波 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、金属半導体複合構造によるLOフォノン共鳴輻射の可能性、および複数種LOフォノンモードと電子系連続準位(価電子帯間遷移による)の結合によるLOフォノンエネルギー領域での電磁誘起透明化の可能性について検討を進めた。 金属半導体複合構造によるLOフォノン共鳴輻射の可能性では、金属/GaNでの界面分極電荷による電気双極子形成の確認に続き、より低エネルギー化を目指して金属/GaAs構造の検討を行った。またエネルギーの選択自由度を上げるため、n型GaAsを用いてLOフォノン‐プラズモン結合(LOPC)モードを用いた共鳴エネルギー制御を試みた。その結果、ドーピング密度の変化に伴うLOPCモード共鳴エネルギー変化に整合した光吸収エネルギーの変化を観測し、この吸収の偏光選択性も確認された。 複数種LOフォノンモードと電子系連続準位の結合による量子干渉では、p型GaInPを用いて検討が行われた。その結果、InP様LOフォノンとGaP様LOフォノンが強く結合し、これらの中間エネルギー域で破壊的量子干渉が起こり、その外側のエネルギー領域で強めあう量子干渉が起こっていることが実証された。また量子干渉を特徴づけるLOフォノン‐価電子帯間遷移および価電子帯間遷移を介した2種LOフォノンの結合パラメータが求められ、電磁誘起透明化につながる量子干渉の物理過程の解明が進んだ。この実験結果を基に、更に高密度p型ドーピングを行った場合の光吸収スペクトルがシミュレーションされた。量子干渉の強度については、それを決める物理パラメータについて、複数種LOモード間の結合定数の決定要因の理論的解明がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
p型GaInPを利用した量子干渉効果については、2種のLOフォノンモードのみでなく、自然超格子による3種のLOフォノンモードを取り入れた解析が行われ、実験データから自然超格子の形成が進んだ場合の量子干渉の様子について予測がなされるなど、量子干渉に関する研究はおおむね予定通り進んだ。しかし、LOフォノンエネルギー位置での輻射については、GaAsにおいて、n型ドープをしたときの共鳴吸収エネルギーの制御性が実証されるなどの進展はあったが、輻射を観測するには至らなかった。その点で、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究で遅れのあったLOフォノン共鳴での輻射の観測を行う。これは、高強度レーザを用いたラマン効果によるLOフォノンの生成および温度上昇によるLOフォノンの励起により行う。検知器の感度の高い波数領域を当面の対象とし、AlNなどワイドギャップ半導体で電子‐フォノン相互作用の強いものを用いる。更に半導体超格子構造などを用いたフォノン局在効果による輻射効率の上昇について検討する。 量子干渉では干渉条件の制御性、GaNなど電子‐フォノンの結合力の強い材料系の検討を進める。前者では、バンド間励起を行う光の入射にによる光吸収スペクトルの制御性の解明を進める。後者では、MgドープGaNについて、測定温度を室温から上昇させ、正孔密度を上げることによる量子干渉状態の変化、金属ストライプ形成に伴う分極の対称性の変化によるE1モードとA1モードの混合などについて検討を進める。これにより、本来同じ振動面に複数種のLOモードを持たない2元系ウルツ鉱結晶においても電磁誘起透明化を可能とするLOフォノン条件が成立する可能性がある。可能な限り単純な材料によりフォノン系電磁誘起透明化を実現することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に使用予定であった論文投稿費用について、論文の提出が遅れたため、次年度使用額が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
既に論文は投稿済みであり、平成28年度に掲載費用として使用する予定である。
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