H29年度は半導体表面への金属/半導体ストライプ構造の加熱による輻射観測を行った。GaAs上への当該構造形成により628Kまでの上昇で8.5THzで全半値幅11/cmの輻射を観測した。構造の最適性と物理現象の探索を行い、フォノン散乱が発光強度を制限する状態にあり、GaAsストライプ幅はサブマイクロメートルから数マイクロメートルがよく、基板上に金属を蒸着したものよりは、メサ構造として金属を埋め込む形の方が発光強度が強いこと、メサの高さは400nm程度までであれば発光強度は増加しており今後数マイクロメートルまで検討してゆく必要ことが分かった。発光強度の絶対値はグラファイトからの熱輻射と比較を理論値と比較して検討され、オーダーとしては理想的な状態になっていることが分かった。また当初予測しなかった特異なスペクトル形状が観測された。これはポラリトン状態との結合によるFano効果である可能性があると考えられた。Fano効果であるならば、2種LOモードを同一振動面に有する混晶系で電磁誘起透明化を光吸収・放出両面から制御できる可能性があり、今後の検討課題を見出すことができた。光の導波として用いることが可能なフォノンポラリトンについてAlN/SiC基板の構造を用いて、AlN中に閉じ込めが可能であることが分かった。また金属/半導体界面の界面フォノンポラリトンモードについても見出すことができ、今後LOフォノン共鳴現象やフォノンポラリトンのデバイスへの展開とそのための基礎物性解明に関する見通しと今後の課題を明確にすることができた。今回の高温狭帯域のTHz輻射は電子系では電子系では困難と考えられる。
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