単結晶酸化物半導体の伝導性制御の新しい方法として、酸化物の生成反応と同時に還元反応を誘起することを試みた。ミストCVD法での成長時に還元剤を加え、酸素の強い酸化力により形成される欠陥を還元反応で制御しつつアクセプタドーピングを行い、p型伝導の実現を目指した。得られた成果の概要は以下のとおりである。 (i) SnO2におけるアクセプタの形成のため、原料溶液にアンモニアやグルコース等の還元剤を溶解させて同時に供給した。XPS測定よりSn(2+)の存在を確認し、ゼーベック効果によりp型伝導が観測された。400oCで成長した試料は、ホール測定において正孔密度2.9x10^15cm-3、移動度0.26cm2/Vsのp型を示した。これにより、本研究の手法がp型伝導の実現に対して効果的であることが明らかになった。 (ii) p型のIn2O3やGa2O3を目指すためには、ZnあるいはMgをドーピングすることが考えられる。In2O3はアンドープで1018 cm-3程度の電子密度を持つn型伝導を示す。ここに還元雰囲気でMgをドープすると、電子密度が減少し、Mgがアクセプタとして作用していることが明らかになった。ただし、In2O3はもとより酸素空孔に基づくn型伝導性が強いため、p型を得るまでには至らなかった。 (iii) Ga2O3へのアクセプタドーピングとして、還元雰囲気化でのMgドープを試みた。しかしながら、Ga2O3はアンドープで高抵抗であり、Mgドーピングを行っても高抵抗のままであった。そこで、Snをドープしてドナを形成した状態でMgをコドーピングした。その結果、Snドーピングで得られた電子密度が減少した。このことから、Mgがアクセプタとして働いていることが確認された。ホール測定で確認できなかったものの、Mgを単独でドープした場合にはp型になっていたことも否定できないと考えられる。
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