研究課題/領域番号 |
15K13352
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
阪口 利文 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (10272999)
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研究分担者 |
富永 依里子 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (40634936)
岡村 好子 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (80405513)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 化合物半導体 / バイオナノ微粒子 / 微生物合成 / テルル化カドミウム / セレン化カドミウム |
研究実績の概要 |
新潟県の原油湧出地から独自に分離したEnterobacter cloacae strain SM9株を用いたテルル化カドミウムを中心としたII-IV族化合物半導体についてその合成条件を調査したところ、その合成には嫌気的な条件設定が必要であり、嫌気呼吸鎖との関連性が示唆される結果が得られた。これに対して、好気的な条件でセレン・テルルオキサニオンに対して還元能を有することを見出した放線菌(Flexivirga alba)やカビ類(Aspergillus oryzae)では、好気条件で培養された培養液へのセレン・テルルオキサニオンとカドミウムイオンの中途添加によっては目的微粒子の形成は確認できなかった。これら場合、添加したアニオンがセレン・テルルととも沈殿せず、セレンもしくはテルルの(単独の)単体微粒子として培養液中に沈殿することが確かめられた。一部の例外として、添加後、長期(300時間程度)にわたってインキュベートした場合では放線菌Flexivirga albaの培養液に亜セレン酸とニッケルイオンを添加したところ、ナノサイズレベルのニッケルとセレンの非結晶の複合体の形成が認められた。これらの結果から、副次的な研究成果ではあるが本実験に使用した微生物の培養液や培養菌体を用いて有害なセレン・テルルオキサニオンを元素体のセレン・テルルとして回収できることが判明した。また、回収の要する時間は0.1mMの初発濃度で1時間以内、1.0mMの場合でも10時間から12時間であり、極めて迅速なセレン・テルル回収が可能であることが判明した。これらの成果の一部については特許出願に至ることができた。また、英文ジャーナルへの投稿を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
独自に分離したEnterobacter cloacae strain SM9株を用いてテルル化カドミウムを中心としたII-IV族化合物半導体についてその合成条件を調査した。まず、合成された微粒子の解析の結果、テルルとカドミウムを含む微粒子の形成を分担研究者とのTEM/EDS解析実験などを通じて確認することができた。その詳細な解析結果から、一部結晶体、一部非結晶体(おそらくアモルファス)で構成されていることが判明し、必ずしもすべて結晶体で構成される微粒子でないことが判明した。また、SM9(8)株を用いたテルル化カドミウム合成条件の解明については、亜テルル酸を電子受容体とする嫌気呼吸の存在をうかがわせる結果が得られており、亜テルル酸を呼吸物質として利用する際に亜テルル酸がtellurideまで還元されることが示唆された。今後この条件を踏まえ、培養時における嫌気条件の設定を変化させるなどの手法で結晶度の高い微粒子を形成できると考えられた。また、微粒子を形成したと考えらえる培養後の菌体を回収後、菌体破砕、抽出行程をせずにそのままマッフル炉で窒素を通気しながら焼成させることで、焼成による結晶度の高いテルル化カドミウムの生成が期待できると考えている。 達成区分については、現時点では、課題研究よりも課題研究から見いだされた副次的成果が多くみられたことは評価できるが、主題となる研究については大きな進展とはいえず、分担研究者との更なる連携の元、効率的に目標課題を進展させる必要があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果として、課題研究自体よりも課題研究から見いだされた副次的成果が多くみられ、特許出願に至ったことは評価できると考えられるが、主題となる研究については大きな進展を得たとはいえず、今後、分担研究者との更なる連携の元、効率的に目標課題を進展させる必要があると判断される。特に、マッフル炉を用いた窒素通気を伴った嫌気的な条件での焼成よって結晶度の高い状態の微粒子を得ることで、テルル化カドミウム合成を確実化させる。また、カドミウム以外の金属種の場合やセレン化物の化合物半導体の合成条件を顕在化させる必要があると考えられる。使用菌体についてはEnterobacter cloacae strain SM9、SM8株などスクリーニング所有株に絞って研究を推進することで前年度の進展の遅れの回復に努めることとする。
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