研究課題/領域番号 |
15K13353
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吹留 博一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10342841)
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研究分担者 |
末光 眞希 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (00134057)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高品質SiC単結晶薄膜 / グラフェン |
研究実績の概要 |
【研究目的】これまで不可能とされてきた課題「グラフェン成長の低コスト化と高品質性の両立」及び「ドレイン電流飽和」を解決し、以て、グラフェン・トランジスタ(G-FET)のテラヘルツ帯動作を実現する。 【背景】グラフェンは、優れた物性を有する次世代材料である。例えば、テラヘルツ(THz)帯で動作するFETの実現が、理論的にはグラフェンの利用により可能となる。G-FET実用化に向けて、申請者らは、Si基板上SiC薄膜上にグラフェンを作製するというGOS法の先導的研究を行ってきた(表面科学会論文賞、 Sci. Rep. (2014))。GOS法はSi技術と適合する有望な成長法だが、SiC薄膜の低結晶性に由来するグラフェンの低品質性を有する。更にG-FETのデバイス開発も行い、THz帯動作へあと一歩の世界最高のG-FETの高周波特性を得た(Proc. IEEE (2013))。更なる特性向上には、ピンチオフの実現が必要である。 【本年度の研究実績】このような課題を克服する為に、本年度は、「デバイス基板(Si・サファイア等)上SiC単結晶薄膜を用いた高品質グラフェン成長を目指して研究を行った。実際に、このような高品質グラフェン成長が可能であることを角度分解光電子分光法及びRaman散乱分光法を用いて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の目標である「SiC薄膜単結晶基板上の高品質グラフェン薄膜成長」に実際に成功し、また、その機構解明にも成功したことから上記のような区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、27年度に作製したグラフェンをチャネルとして用いて、デュアル・ゲート構造を有するFET(DG-FET)を作製する。このデュアル・ゲートの二つのゲート電極電圧の適切な設定により、単極性動作させることが可能となる。このような新たな構造・原理に基づいたDG-FETを用いて、ドレイン電流の飽和(ピンチオフ)、引いては、THz帯動作を狙う。 (デバイス作製)これまで申請者らが構築してきたデバイス作製技術(Proc. IEEE (2013))を用いて、DG-FETを作製する。このDG-FETのチャネルとして、27年度に作製した作製したグラフェンを用いる。ゲート絶縁膜として用いるAl2O3薄膜(厚さ10 nm)は、電子ビーム蒸着装置により堆積させたAl薄膜を自然酸化させることにより作製する。また、ゲート電極及びソース/ドレインとしてNi蒸着膜を作り込む。 (評価)上記のようにして作製したDG-FETの静特性(ドレイン電流-ドレイン電圧、ドレイン電流-ゲート電圧曲線)を測定する。更には、高周波特性を測定する。具体的には、電流利得の周波数特性の実験値から外挿して、遮断周波数を求める (Proc. IEEE (2013))。得られた電気特性が良くない場合は、プロセスの見直しを行う。特に、グラフェンにダメージを与え得る絶縁膜の作製条件(Fukidome et al., J. Mater. Chem. (2011))の再検討を行う。
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