【学術的背景】グラフェンは、優れた物性を有する次世代材料である。例えば、テラヘルツ(THz)帯で動作するFETの実現が、理論的にはグラフェンの利用により可能となる。G-FET実用化に向けて、申請者らは、Si基板上SiC薄膜上にグラフェンを作製するというGOS法の先導的研究を行ってきた(表面科学会論文賞、 Sci. Rep. (2014))。GOS法はSi技術と適合する有望な成長法だが、課題①:SiC薄膜の低結晶性に由来するグラフェンの低品質性を有する。更にG-FETのデバイス開発も行い、THz帯動作へあと一歩の世界最高のG-FETの高周波特性を得た(Proc. IEEE (2013))。更なる特性向上には、ピンチオフの実現(課題②)が必要である。 【本年度の研究計画】項目①で作製したグラフェンをチャネルとして用いて、デュアル・ゲート構造を有するFET(DG-FET)を作製する。このデュアル・ゲートの二つのゲート電極電圧の適切な設定により、単極性動作させることが可能となる(特許出願済み)。このような新たな構造・原理に基づいたDG-FETを用いて、ドレイン電流の飽和(ピンチオフ)、引いては、THz帯動作を狙う。(デバイス作製)これまで申請者らが構築してきたデバイス作製技術(Proc. IEEE (2013))を用いて、DG-FETを作製する。 【本年度の成果】上述のようなデュアル・ゲート構造を有するデバイスの試作に成功した。電気特性の評価の結果から、予想通りの飽和特性ではないが、ドレイン電流が飽和することが確認された。
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